知名度がない中小企業が優秀な学生を採用する方法

採用難といわれる現在で新卒採用にお悩みを抱えている中小企業・ベンチャー企業・スタートアップ企業の経営者、人事担当者の方も多いのではないでしょうか。 求人広告などを展開されている株式会社マイナビの「2019年マイナビ大学生就職意識調査」によると、学生の約7割が大手企業志向の様です。 また、株式会社リクルートの「第35回ワークス大卒求人倍率調査」によると、中小企業の求人倍率は過去最高の9.91倍となっており、史上類を見ないほどの採用難時代となっております。 

 では、大手企業のように知名度がない中小企業やベンチャー企業では優秀な学生を採用することは無理なのでしょうか。

 決してそんなことはありません。今回は中小企業やベンチャー企業でも優秀な学生を採用する為のポイントをご紹介します。

1.分不相応な採用が会社を成長させる

国内でトップクラス、海外でも評価が高い企業であっても、知名度が低いから、小さい会社だからという理由で優秀な学生を採用できないと嘆いている経営者の方が沢山いらっしゃいます。その為か、新卒採用にはあまり力を入れずに、即戦力となる中途採用に力を入れたがるのです。 これ自体は間違いではありませんが、新卒採用と中途採用では違う魅力があるのも事実です。

 新卒の魅力はなんといっても「若さとバイタリティ」です。 春先の4月に新卒が入社してくるだけで社内は活気づきます。 この経験は皆さまもあるのではないでしょうか。

 今の若い人たちは、今までとはタイプの違った優秀さとバイタリティを兼ね備えております。先行きの見えない、確実な答えのない時代には、その力こそが会社の発展に寄与するのです。

「自分たちよりも優秀な学生を採用しろ」

これは、リクルートの創業者である江副浩正氏がいつも口にしていた言葉です。

 リクルートではこれを「分不相応な採用」と呼んでおりました。

この「分不相応」に優秀な人材の採用こそが、中小企業やベンチャー企業を伸ばすのです。どんな大企業も、最初は小さい企業から始まりました。それが、背伸びをして夢を語り、若い優秀な人材を魅了し集めていくことによって、徐々に今のような大企業になっていったわけです。勿論、小さな企業がダメとは言うわけではありません。小さな優良企業もいくらでもあります。

ただ、理想があるのであれば、社会に対してそれをインパクトある形で実現するためにも、たくさんの優秀な人材達のいる大きい会社となってパワーを持つことは一つの方法です。会社を伸ばしたいのであれば、中小企業やベンチャー企業も新卒採用が適しているのです。

そして、身の丈にあっていない「分不相応な採用」こそが会社を成長させるのです。

2. 採用成功に向けた5つの方法

ここまで読んで頂き「優秀な学生を採用することが良い効果があるのはわかった。それで何をすればいいんだ?」と感じた方もいらっしゃると思います。 ここからは「分不相応な採用」を実現する為のポイントをご紹介します。

 

2-1:社長がプロジェクトの先頭に立つ

2-2:現場のマインドを変える

2-3:情熱を持って真剣に口説く

2-4:どんな名目でも「会う」ことを先決させる

2-5:全社員を採用活動に巻き込む

2-1:社長がプロジェクトの先頭に立つ

 優秀な学生を採用すると決意したら、まずすべきことは社長自らが先頭に立つということです。 「そんなことしたら、人事部の立場がなくなるのでは?」と思う人もいらっしゃると思います。 しかし、新卒採用が上手くいっていない企業でよくある傾向として、新卒採用を全て人事部に任せてしまっていることです。大企業ならその方が効率的かもしれません。 しかし、中小企業が「分不相応な採用」を実現するのなら、社長が先頭に立つことが重要なのです。

 あなたの会社の人事部長に「自分たちよりも優秀な学生を採用しよう!」と指示を出したとき、それだけで事が進むでしょうか。恐らく上手くいかないことが多いでしょう。

何故かというと、人事部と一口に言っても、いわゆる一般的な人事業務と、人を口説いて結果を残さなければならない採用業務とでは、求められる資質が全く異なるからです。

 一般的な人事業務で求められる資質は、決められたルールを運用する、給与計算をする、評価制度を運用してもらう、それに則った昇進昇格を管理するといったことがきちんとできるかどうかです。その為、その様な資質の人が採用を担当すると、大企業が行っているような「待ちの採用計画」を立てて、それを忠実に実行しようとします。

 ところが、優秀な学生は、待ちの構えだけでは採用することが難しいです。採用の網を広げて積極的に優秀な学生と会い、スカウト活動などを組み合わせていく必要があります。事務能力が高いだけでは結果を出しにくいのが新卒採用活動です。求められる資質は、狩猟民族的な営業タイプの人です。

 ですので、新卒採用は社長の専管事項にする必要があるのです。社長直轄のチーム編成にするのもいいでしょう。

 ただ、注意して頂きたいのは、何も必ずしも社長自らが採用業務のすべてを行いましょうと言っているわけではありません。 社長が先頭に立つことで、優秀な学生を採用するということを、社内に強いメッセージを発信することが重要なのです。

2-2:現場のマインドを変える

社長がプロジェクトの先頭に立つ理由はまだあります。それは、社長の視点と採用担当者が違うからです。

採用担当者のゴールは、計画通りの人数を入社させることです。 一方で、社長のゴールはあくまでも新卒採用によって会社の業績をアップさせることです。何年先を見据えて、来るべき変化に備えて優秀で多様な人材を確保しようと考えるのが経営者である社長ですが、それを遂行できない人事部が多いのです。

しかし、採用担当者にも同情すべき点はあります。どのような新人がほしいか現場にヒアリングをすると、即戦力的なマスト条件を沢山あげてきます。 人事部としては、それに従うだけではいけないことは承知してますが、なんせ社内では現場の声の方が強かったりするので、八方美人的、足して2で割るような対応にならざるをえないことが多いのです。

そんな状況を変えることができるのは、やはり社長しかいません。 我々の経験から言っても、採用担当者は社長が現場に「人事に協力しろ!」と指示してくれるのが1番嬉しかったりするのです。 それをやらずして、人事に対して文句を言うのはお門違いです。

 また、採用担当者は現場から「どうしてこんな人を採用したんだ!」と文句を言われることが多々あります。

このようなマインドを変えることができるのも、社長しかいません。

 社長自らが先頭に立ち、現場にも採用の重要性を説き、協力を仰ぐことで採用担当はずっと採用業務がしやすくなるでしょう。

2-3:情熱を持って真剣に口説く

社長が先頭に立つ理はもう1つあります。 それは、社長でないと優秀な学生を口説けないことがあるからです。

 採用担当者では、学生に対して約束できないことがあります。 例えば、「わが社は将来こういう事業展開を考えている。君にはそれを担ってほしい!」という話はいち社員の立場では難しいでしょう。

 しかし、社長であればそれが可能です。今はまだ形すらない将来の事業を、確信を持って語ることが出来るのは社長だけです。

本当に実現できるかどうかは別として、社長が「こうしていきたいんだ!」と夢を語ることは嘘ではありません。 社長のその情熱に社内にも賛同者がきっと現れるでしょう。効果は優秀な学生を口説くだけではなく、二重にも三重にも拡がっていくでしょう。

 人の心を動かすという意味では、採用も営業も同じです。採用活動でも社長がこんな風に口説くわけです。

 

「私は君に社運をかけている。君にとっても、これほどやりがいのあることはないのではないか。 大企業に入って、優秀なライバルと競争しつつ高級な歯車になるよりも、よっぽど面白い人生になる。 君を幹部候補として、若いうちから大きな仕事を任せたい」

 

社長や営業のエースが真剣に口説けば、その情熱は学生に必ず伝わります。

2-4:どんな名目でも「会う」ことを先決させる

 もし御社が「分不相応な採用」を実現したいのであれば、自分たちから優秀な学生がいる場所や市場に出かけていくことが重要となります。 

どんな名目であろうとも「会う」ことが先決となります。 

 

真面目に採用しようとすればするほど、普通に「まずは会社説明会からだ!」と思ってしまうものですが、知名度と会社説明会の魅力度はほぼイコールですので、地名が低い会社が最初の母集団形成イベントに会社説明会を持ってくることはあまりおススメしません。それでは学生が集まらないのは当然だからです。

知名度があまりない中小企業には、中小企業の戦い方があります。

それが「手段を選ばずとにかく会う」ということです。会社説明会をしなければならない、という常識から離れて、「もし、とにかく学生に会うなら、どうすればよいのか」考えてみてください。

最初の出会いはなんでもいいので、会って、親近感を持ってもらってからが本当の勝負となります。 優秀な学生には「採用」とは別の理由で会う。これがスカウトの鉄則です。

 

※学生との会い方 例

食事をごちそうする

アルバイトの募集(1時間数千円の自社の採用ブランドに関するアンケートのアルバイトに参加しませんかと誘う)

学生団体に協賛する代わりに自社の懇親会に就活生を集めてもらう

著名人の講演を開催し、集客をする などなど

2-5:全社員を採用活動に巻き込み、参加させる

続いてのポイントが「採用活動に全社員を参加させる」ということです。一般的に現場社員は忙しいので、採用活動に協力することに消極的です。「そんなこと言ったって、協力してくれなんて言いにくいよ、、、」なんて感じる方も多いと思います。

 しかし、「分不相応な採用」を実現することによって、会社を飛躍させたいのであれば、全社員を巻き込むことは絶対に必要です。 その理由は4つあります。

優秀な学生をフォローする

会社に対するコミットメントを引き出す

自信を取り戻す

全社員で育てる文化を作る

 

■優秀な学生をフォローする

 優秀層の学生を採用したいのであれば、全マンパワーのうち、相当部分を学生のジャッジではなく、「フォロー(口説き)」に割かなければなりません。

人間は、単純に接触回数が多いほど親近感が沸きますので、担当者と学生の間に人間的な深いリレーションが作りやすくなります。 また、優秀な学生を口説く為には、現場のエースクラスの社員に会わせる方が効果的です。

 更にできるだけ途中辞退者を防ぐためには、学生と採用担当者(面接官やリクルーター)の相性も細かく配慮していく必要があります。

例えば、①熱血タイプ ②知的タイプ ③素直タイプの3つのうち、今年の採用計画では、それぞれの割合を2対5対3に設定したとします。 この時、担当する社員と学生の相性を何も考えずに何度か選考を繰り返すと、どうなるでしょうか。

学生は苦手なタイプの社員とあたった時に辞退してしまいます。ですから、結果的に相性がいい学生だけが残る結果となります。 これでは計画通りの割合で採用することは非常に困難でしょう。 しかし、全社員が採用に関わっていれば、その学生のタイプや価値観にあわせて同質な社員を組み合わせることもできるのです。

 

会社に対するコミットメントを引き出す

 人間は不思議なもので、いつも会社の不満ばかり言っている社員も、外部の人に自社の話をするときには不満を言わないものです。

特に採用の場合、学生から質問を受けることで、その社員自身が自社の良さや目指す方向、自分の在り方などを確認することができます。 それによって社員のモチベーションアップが期待できるのです。

 

自信を取り戻す

 素直な気持ちの学生と話すことで、自信を取り戻せる社員もいます。営業職などで自信を失いかけていた社員などは特にそうです。

学生は目をキラキラさせて話を聞いてくれるので、話してる本人も自ずとイキイキとしてきます。 学生側から色々と質問されることで、忘れていた新人時代の気持ちを思い出すこともあるでしょう。

■全社員で育てる文化を作る

「分不相応な採用」を始めたとたんにこれまでとは雰囲気が異なる新人が現場に配属されていきます。 

その際、「なんでこんな人を採用したんですか?」と現場が怒るような風土では、せっかく採用した新入社員が潰れてしまいます。 もしくは、今の社員と同化してしまい、とがった人材を採用した意味がなくなってしまいます。

新人を育てるということは、会社を育てることと同じです。

いくら優秀な学生を採用しても、最初から即戦力になることはなかなかありません。

育てる文化のもとで、大きく成長させることが必要なのです。

 その為には、社長が自ら号令をかけ、新卒を採用することの意味と意図をしっかりと全社に伝え、全社員を採用時点からかかわらせた方がいいでしょう。

 採用からかかわり、自分がフォローした人材なら、より責任を持って育てることになります。

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。 今回は知名度がなくても優秀な学生を採用する為のポイントをご紹介しました。

 新卒採用活動は工数もかかる為、楽ではないと思います。しかしながら、会社が実現したい夢や理想があり、成長させるためには「分不相応な採用」が非常に重要となってきます。 今回の内容が皆様の採用活動のご参考になれば幸いです。

参考文献

・「2019年卒マイナビ大学生就職意識調査」株式会社マイナビ

http://mcs.mynavi.jp/enq/ishiki/data/ishiki_2019.pdf

・「第35回 ワークス大卒求人倍率調査(2019年卒)」 株式会社リクルート

https://www.recruit.co.jp/newsroom/2018/0426_18161.html

 

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曽和利光

曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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