1. リファラル採用とは何か
「リファラル採用」とは、リファラル(referral=「推薦・紹介」の意味)という文字どおり、従業員や就職予定者本人やその友人など、社内外の人的ネットワークを介した推薦・紹介から自社に適した人材を探す採用手法です。
2. リファラル採用が生まれた背景
まずはじめに、リファラル採用がなぜ注目を浴びるようになったのか考えてみましょう。
その背景としては、採用難の時代に突入した点が大きく関わっていると考えられます。20卒の有効求人倍率は1.83倍と高く、学生にとって「売り手市場」になっています。それ加え、総務省「労働力調査年報」によれば、2016年から2065年で、労働力人口は6648万人から3946万人へと、約2700万人、約4割減という予想が出ており、このことからも採用難が続くことが読み取れます。
そのため企業も優秀な人材の獲得競争に乗り出さなければいけなくなってきたのです。採用難だからこそ、これまでの採用手法以外に加え、何かできないかと検討され、その解決法の一つとしてリファラル採用が導入されるようになってきたと言われています。実際に新卒一括採用ではなく、個別の採用が中心のアメリカではすでに8割以上の企業がリファラル採用を手段として採用を行っており、メインの手段としても定着しているような状況です。今こそリファラル採用を通して、優秀な人材を獲得していきましょう。
3. リファラル採用を行う4つのメリット
リファラル採用では、求人サイトや人材紹介会社など既存の採用手法に頼らずに、人材のレベルや質を確保し、採用のマッチング精度を高めることを目指すのが特徴です。それでは一体リファラル採用を導入することで生じるメリットとは一体何でしょうか。ここでは以下4つの例を挙げておきます。
- 企業の知名度や採用ブランドの影響を受けない
- 選考の精度が上がる
- 採用コストや必要マンパワーが減る
- 組織へのコミットを加速させる
3-1.企業の知名度や採用ブランドの影響を受けない
1つ目は企業の知名度やブランドの高さに関係なく、母集団を形成することができる点です。例えば求人サイトからの応募者は、元々自社に興味を持っている人材です。そうなった場合、自社のブランドが高ければ高いほど、有利になります。しかしリファラル採用では、紹介者を通して会うため、自社の認知度やブランドは一旦度外視した状態で、出会いの場を作ることができるのです。このため知名度が低く、採用ブランドも高めではない企業にこそ、スポットライトが当たる採用手法と言っても過言ではないのでないでしょうか。
3-2.選考の精度が上がる
2つ目は選考の精度が上がるという点です。元々コネクションがある人を採用する場合、長年の付き合いがありその人の特性をよく知っているということになるため、応募者のアセスメント(評価)がしやすくなる効果があります。
3-3.採用コストや必要なマンパワーが減る
3つ目は採用に関わるコストやマンパワーを削減することができる点です。従来のように求人サイトや人材紹介会社を利用する場合に比べ、求人広告の掲載料や紹介手数料が不要となるため、採用コストの削減に繋がります。
3-4.組織へのコミットを加速させる
最後は組織へのコミットを加速させることができるという点です。紹介者同士にはすでに信頼関係があるので、社内の絆が深まる。そしてシンプルにいうと、悪いことができなくなるので、組織へのコミットも臨まれます。実際にアメリカのとある調査では、人材紹介経由で入社した社員よりも、リファラル採用で入社した社員の方が定着率が高いという結果も出ています。
このようにリファラル採用には、組織の活性化を導く上で様々なメリットがあります。一方でお金をかければリファラル採用ができるわけではなく、採用担当者のスキルが要求されてしまう側面があります。どのようにリファラル採用を進めていくかの仕組み作りは考えるべき観点の一つとなるでしょう。
4.リファラル採用の進め方
リファラル採用では以下のようなステップで行うのが効果的です。
- ターゲット選定
- リファラル担当者を決める
- 実行(紹介募集→初期接触→本選考誘導→意思決定促進)
4ー1.ターゲット選定
まずはどこの層をリファラル採用でとっていくのかターゲットを定めます。リファラル採用では、既存の採用手法ではアプローチできなかった優秀層、採用難易度が高い層をターゲットにするのが一般的です。
4-2.リファラル担当者を決める
次にリファラル採用担当者を決めましょう。その際、対人影響力、人間関係構築力が強いこと、さらに、リファラル採用のターゲットにする人材に似ている者を担当者とするとよいでしょう。なぜならば人間は心理学的に「類似性効果」という自分と似ている人に対して好感を抱くというバイアスを持っているからです。そのため自分と似ている人を高く評価する傾向を活かすこともできます。例えば採用担当者と大学、所属グループ属性、年齢層、パーソナリティ、志向・価値観などの求める人材と同質なタイプをリファラル採用担当者として配置することで、リファラル採用がしやすくなっていくことでしょう。
4-3.実行(紹介募集→初期接触→本選考誘導→意思決定促進)
採用担当者が決まったら次は実行に移すのみ、社員に人の紹介を行ってもらいましょう。紹介してもらった後は実際に会ってみて、自社のことをインプットしているうちに、もしある程度自社への興味がでてきたと思ったら、本選考に案内します。最終的に合格し、入社意思を固めることができたらリファラル採用成功です。
5.リファラル採用を成功に導く4つのポイント
リファラル採用を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。特に、紹介募集(社員・内定者に人材の紹介をお願いする)→初期接触→本選考誘導→意思決定促進、それぞれのフェーズに大切なポイントをお伝えしたいと思います。
・紹介募集(社員・内定者に人材の紹介をお願いする)
まず紹介募集を行うフェーズでは、人を紹介してもらう依頼を全体に伝えるのではなくて、個別に依頼することが大切です。大勢がいる前で依頼されると、「誰かがやってくれるだろう」と結局行動に移してもらえないこともあります。そのため個別に依頼をするようにしましょう。またその際、社員・内定者に対してリファラル採用に協力してもらえるような環境作りをすることも重要です。例えば簡単に紹介できるような資料を用意したり、個人ではなくコミュニティを紹介してもらったり、連絡の許可を得るだけの状態にしたり、など紹介する際の心理的なハードルを下げるような工夫を取り入れることが必要です。
・初期接触
次に初めて紹介を受けた人に会うフェーズでは、できるだけカジュアルな場面で会いリラックスできるような機会を作ることが重要になります。求人媒体や人材紹介とは異なり、志望度が高くない人との接触であり、こちらから会って欲しいとお願いしているのにも関わらず、会社説明会や選考をいきなり行ってしまうのは逆効果です。しっかりと対話をすることで、本選考へ移行するようにします。
・本選考誘導
本選考誘導のフェーズでは、スピード感が重要です。新卒でも中途でも、応募者が正式に受験をし始めてから2週間から1か月以内で会社としての結論を出せるようにしていないと、スピードが遅いがゆえに辞退率が上がってしまう傾向があります。リファラル採用は特に優秀層に会える採用手法であるがゆえに、採用競合が強い。そのために、スピード感がないと他社で決まってしまい、辞退になってしまうことも多いのです。加えて紹介をしてもらいながら何日も何週間も放っておいたのであれば、紹介した側の面目をつぶしかねません。
・意思決定促進
最後の意思決定促進のフェーズで必要になるのは、相手を知ること、それから相手が求めている情報を伝え切るという姿勢です。入社の覚悟を決めるにあたり、不安要素を払拭する必要があります。そのためネックに対して、自社の情報を添え具体的に回答をし、納得感を持った上で意思決定のサポートしていきましょう。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。これからの採用活動は、採用難を乗り切るためにリファラル採用が効果的であることをお伝えしました。またリファラル採用の具体的な進め方やその際に抑えておくポイントについてもご紹介しました。ぜひ、皆様の会社でもリファラル採用の導入を考えていただければと思います。
参考資料
・「ネットワーク採用とは何か: 採用難時代を乗り越えるこれからのスタンダード」労務行政 曽和利光https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%8E%A1%E7%94%A8%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%8B-%E6%9B%BD%E5%92%8C%E5%88%A9%E5%85%89-ebook/dp/B06XRJTDPR
・「労働力調査年報」 総務省調査年報
https://www.stat.go.jp/data/roudou/report/2018/index.html
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