1.努力や成果のレベルに直結するものはなに?

人によって、努力や成果のレベルが違うのはなぜでしょうか。

もしくは、最初は同じだけ成果を出している人たちでも、一方はぐんぐん伸びていく、一方は当初と変わらず水平飛行、この違いは何でしょうか。

そもそもの能力に違いがあれば、もちろん成果のレベルは変わります。しかし、能力だけが理由であるとすれば、最初は同じ成果であった両者にだんだん差が出てきてしまうことを説明することはできません。

挑戦心や向上心、根性のようなバイタリティも同じです。バイタリティが高い人と低い人で、もちろん成果のレベルは変わるでしょう。しかし、これも最初は同じ成果の両者に差が出てきてしまう理由の説明にはなっていません。

私は、これを説明するのは「どこまでやったら頑張ったと思えるのか」という素朴な感覚だと思います。

これを平たく言えば、「当たり前基準」や「当たり前水準」などと呼んだりします。

その人にとって、“ここまで頑張るのは当たり前“というバーのことです。

では当たり前水準と能力はどう違うのでしょうか。

Aさんは、もともとの能力はあまり高くなく、色々へまをやったり、手際が悪いが、何をしても自分はまだまだと思っており、「これでいいや」とは中々思わない人です。

一方のBさんは能力が高く、何をやらせても人より早く理解・拾得でき、器用で機転も聞きますが、「自分はよく頑張っている。周りから評価もされているし、これでいいや」と思いがちな人です。

この二人はスタート時点の初速は違いますが、時間が経つとともに、AさんがBさんを抜かしていきます。

これが当たり前水準で、AさんとBさんそれぞれのタイプでは、初めから投入する努力量が違います。

また同じだけ努力をしても当たり前水準が低い人は「自分はとても頑張った」と感じ、当たり前水準が高い人は「自分はまだまだだ」と感じるわけです。

前者は、そこで満足してしまうため、それ以上の努力をせずに成果も一定で止まってしまうわけですが、後者はさらなる努力をして、成果を極大化しようとします。どちらが最終的にハイパフォーマーになるかはいわずもがなでしょう。

おそらくどの組織でも、AさんやBさんのようなタイプがいるのではないでしょうか。

2.当たり前水準が高い=謙虚?

ただ、間違いやすいのは、この当たり前水準が高い人は、つまり謙虚で、自己肯定感が低い人かというと、そうではないことです。

私は自己肯定感と当たり前水準はそれぞれ独立した別の概念であり、I‘m OK(自己肯定はしている)だが、まだまだ足らない(満足はしていない)状態は存在すると思います。

ヒーローインタビューで「自分はまだまだっス」とストイックに言いながら、成果を出し続けているサッカー選手や大相撲の相撲取りたちが良い例かもしれません。

むしろ適度に自己肯定感があることは、日常的に一定のパフォーマンスを維持する上で重要な要因なので、自己肯定感が低いとそもそも「自分には無理」と早々に諦め、努力を回避してしまいそうです。自己肯定感の過度な低さはメンタル不調にも直結します。

その意味では、当たり前水準は、自己肯定感とは別の「熟達への志向性」といえるかもしれません。

3.だれと一緒にやるかが当たり前水準を作る

この当たり前水準を高めるためにはどうしたら良いでしょうか。

方法の一つとして、自分より当たり前水準が高い(高そうな)集団の中に入っていき、共通の目標に向かって努力する経験を積むことは良さそうです。

先のプロスポーツの世界をまた例にとると、プロを本気で目指す人は、自分よりうまく、努力も何倍もしているであろう人がたくさんいるチームに入ります。

強豪校に入って“揉まれる”というのは、周囲の当たり前水準が、自分と全く違うことに気付かされ、そこに合わせられるようにもがく、という意味でしょう。

仕事においても同じで、自分よりもレベルが高い人たちと一緒に仕事をすると、自然と自分のレベルも上がっていくのだと思います。

私も、自分の当たり前水準を高め続けられるように、だれと一緒にやるかを意識していきたいと思います。

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安藤健

元々、臨床心理学を学んでおり、児童心理治療施設(虐待などで心に傷を負った子ども達の心理支援をする施設)にて、長らくインターンをしていました。 ここは、まさに心理学を「病の治癒」に活かす現場でした。そこから一転、心理学を「人の能力開発」へ活かしたいと感じ、人事という世界に飛び込んでみました。 現在では、こういった心理学の観点なども踏まえつつ、人事・マネジメント系コラムの連載をしています。

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