1.面接の時は良い感じの人に見えても…

採用面接の時は、受け答えもこちらの意図をうまく汲んで気持ち良いコミュニケーションが取れ、頭の回転も速そう。適性検査を受けてもらったら、基礎能力は抜群に高い。

そんなとても優秀に見える候補者が、実際に入社した後、思ってもいなかった形でくすぶっているケースが多くあります。

その理由のひとつに、ものごとへの「意味づけ力」が挙げられるかもしれません。

意味づけ力とは、ものごとに対して、その目的・価値を自ら考え、感じられる力のことです。

特に、仕事上与えられた、やらなければならない義務的なものに対して、本人がどう意味づけできるかは、その成果だけでなく、次の仕事をもらえるかにも強く影響していると思います。

2.「こんなの意味ない」ではなく「きっとこんな価値があるだろう」という前向きさ

やらなければならないことに対して、どれだけセルフモチベートできるか、という意味づけ力。

これはより具体的には、ふつうの人であればつまらないと感じてしまう仕事に対して「こんなの意味ない」「面倒だ」ではなく、「これは自分にとってきっとこんな意味があるだろう」と自分なりに価値を見出す力です。これはポジティブシンキング(ものごとを肯定的に捉える)や挑戦心(新しいことにチャレンジするフットワークの軽さ)とも関係がありそうな力です。

仕事は自分が好きなことや得意なことだけをやれるわけではなく、苦手だがやらなければならない仕事も発生します。特に入社間もない新人の時点から、かねてよりやりたかった仕事をいきなり任せられるというのは、日本の企業において稀でしょう。

しかも、年次があがっていき、やりたい仕事が徐々に増えていったとしても、それだけで満たされることは現実的にはほぼありません。私も、いまはやりたい仕事、楽しいと思える仕事にあふれていますが、それでも義務的に発生したことや苦手意識をもっている仕事も任されます。

つまり、働く以上、やらなければならない仕事は常に存在するということです(悲しきかな)。

3.活躍する人材は意味づけ力が高い

私たちの会社では、様々な企業にコンサルティングを始める入口として、その会社で活躍している人材の特徴を調べているのですが、彼らは与えられた課題や義務に対して自分なりの目的や意味づけをして取り組んでいる特徴を持っています。

阪急東宝グループの創業者である小林一三が「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」と言った通り、人事的にも任され仕事をつまらない仕事だからと、そこそこのスピードとパワーをかけてそこそこの成果を出す人よりも、「これは自分の将来やりたいことにこんな意味がある」などと意味づけをして、全力で取り組み成果を出す人で比較すると、後者の方へ次第に様々な仕事(本人がやりたがっていた仕事も含め)を任せるようになってきます。

これは前者が気にくわないからという理由ではなく、任されたどんな仕事も全力でこなせる人には他の仕事でも成果を出してくれるだろうという信頼があるからです。

キャリアにおいて、社内外を問わず、他の人からの信頼係数をいかに高めるかが、重要なキャリア戦略の一つだと思うのです。

そのために、本人は「この仕事、やりたくないな」と思っても一歩立ち止まって、「この仕事で成果を出すことは自分にとってどんなメリットがあるだろう?」と考えてみることが大事です。

一方で、人事部は、意味づけ力が最初からある程度高い人材を、面接などで見極めるようにすると入社してから、こんなはずでは…というミスマッチを防ぐことができるかもしれません。

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安藤健

元々、臨床心理学を学んでおり、児童心理治療施設(虐待などで心に傷を負った子ども達の心理支援をする施設)にて、長らくインターンをしていました。 ここは、まさに心理学を「病の治癒」に活かす現場でした。そこから一転、心理学を「人の能力開発」へ活かしたいと感じ、人事という世界に飛び込んでみました。 現在では、こういった心理学の観点なども踏まえつつ、人事・マネジメント系コラムの連載をしています。

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