1.仕事や時代を超えた「優秀さ」
前回は、どんな仕事をするかによってそこで求められる優秀さは変わるし、あらゆる仕事が知性化してきていることで同じ仕事であっても昔と今では優秀さの定義が変わってきているというお話をしました。
人のパーソナリティはただの特徴であり、本来絶対的な強み・弱みなどなく、どんな仕事をするかで強みとなるか弱みとなるかは変わることを考えると、「適材適所」が存在し、必ず誰しも向いている仕事・向いていない仕事があるということになります。
ただ、人の能力というのはモジュール構造となっており、より表面的な能力は仕事によって求められるものが異なったとしても、その根っこの部分にあたるコアスキルはあらゆる仕事に共通していそうです。
では、そのコアスキルというのは何かというと、下の2つがまず最も重要ではと考えています。
・自分のことをできるだけ正確に認識していること
・「どうにかできそう」「何とかなりそう」という根拠なき自信を持っていること
この2つのコアスキルは多くの能力のベースにあるもので、仕事の特性が変わったとしても変わりません。つまり仕事や時代を超えたスキルであり、ある意味、普遍的な優秀さであるともいえるでしょう。
今回は、この2つについて紹介したいと思います。
2.自分のことをできるだけ正確に認識していること
まず自分のことをできるだけ正確に認識していることですが、これは自己認識や自己認知と呼ばれます。自己認知は、実は多くの能力のベースになっています。
例えば、自分のことをわかっていないと、成長につながらなかったり、チームプレイでつまづいたり、現実を歪んで捉えてしまうことで顧客との折衝がうまくいかなかったりします。
というのも、自分のことを正確に認識できていないということは、何が自分の課題であるかも把握できていません。成長するためには、まず課題を認識し、克服していくことが必要なので、そもそも認識できていないと成長も見込めないからです。
また自分が得意なことと好きなことの違いを正確に理解していないとチームの中でポジショニングを誤ります。例えば野球で、肩が激烈に弱いにも関わらず「自分はピッチャーしかやりたくない!」というチームメイトがいたとしたら周りは困ってしまいます。このようにチームプレイが苦手な人は、得てして自己認知が低いです。
そして、自分の持っている価値観や無意識の偏見に気付いていないと、現実を何でも自分の都合の良いように解釈してしまい、結果的に物事を歪んで捉えてしまいます。となると相手の立場を踏まえながら交渉する難しい場面ではうまくいかないことが多いでしょう。
このように自己認知は、多くの能力の基礎となる重要な要素のようです。
僕自身も、自己認知がずれていないか日ごろ確認するために意識的に周りの人にフィードバックをお願いするようにしています。
3.「どうにかできそう」「何とかなりそう」という根拠なき自信を持っていること
根拠なき自信というと、どこか地に足のついていない楽天家のイメージもありますが、ここでの自信は、もう少し現実的で冷静な自信のことです。
なぜなら、ここでの自信は、結果に対する漠然とした前向きさではなく、結果を出すまでに必要な行動がとれるだろう、という地に足ついた自信のことだからです。
人が何らかの行動をとって、それが何らかの結果につながるまでのプロセスの中で、「自分は結果を出すまでに必要な行動をうまく取れるだろう」という感覚のことを効力期待といい、別名、自己効力感と呼びます。
例をもって説明すると、大学受験で難関大学を目指していた場合、“1日16時間の勉強を1年間継続したら目指す大学に合格できるだろう”と思うのが「結果期待」で、“自分ならその1日16時間の勉強を1年間継続できるだろう”と思うのが「自己効力感」です。
【自己効力感】
自己効力感もまた、さまざまな能力のベースになっています。
自己効力感が高い人は、「何でもとりあえずやってみよう」となるので、フットワークの軽さや挑戦心につながるからです。
実はこの自己効力感は非常に研究が進んでおり、仕事のパフォーマンスが上がったり、面接の高評価につながるという研究結果もあったりするだけでなく、本人の健康上も重要なキー概念らしいです。
ある意味最強ともいえる自己効力感ですが、成功体験を積み重ねることで最も高まります。
難易度が高く最初は心が折れそうな大きな目標でも、段階的に小さな成功体験を積み重ねることで「達成できそう!」と段々自信がついてくる経験は、きっと誰しもが持っていると思います。
こうした成功体験を積むことで、自己効力感が高まり、自己効力感によってフットワーク軽く別のことにも挑戦し、また成功体験を積んでいく…という良いループができると勢いよく力がついていく気がしますね。そのためには、「はじめの一歩」としてまず小さな挑戦から始めるのが良いのかもしれません。
安藤健