「時期」ではなく「手法」にフォーカスで上がる採用力

 新卒採用の採用活動時期において、日本経団連が定めてきた”就活ルール”に、悩み、疲弊してきた採用担当者も多いのではないでしょうか。もちろん、何をどの時期にどれだけやるかという採用活動時期の課題は一番大事ではあります。

 しかし実は、時期の課題より手法にフォーカスを持っていくことで採用成功に近づくことができます。なぜ手法にフォーカスなのか、ということを具体例とともにご紹介しつつ、それでもいつから採用活動を始めるべきか悩まれる方も多いと思いますので、最後に時期について悩む人事に必要な「考え方」をご紹介します。

1.採用担当者が就活ルールよりも悩むべきはその「採用手法」

採用活動時期について多くの採用担当を悩ませているものの一つが、いわゆる”就活ルール”です。この日本経団連が定めた「就活ルール」は、企業の採用活動期間を一定期間に定める、といものです。そして、その意義は就活が学生生活や学業の妨げにならないよう、という倫理的観点にあります。

これは新卒の一括採用と言われています。2017年卒採用で定められたルールでは、採用広報の解禁は大学3年生の3月、選考解禁は大学4年生の6月、内定出しは大学4年生の10月からとなっています。それ以前には選考解禁が8月に変更されたり、最近では制約を廃止し通年採用化への動きもあるなど、困惑された人事担当者も多いと思います。現在は政府主導のルールとして変更されましたが、時期は変わらず現在もこのルールは続いています。

 ただかつてこれは、あくまで経団連が定めた指針であったため、経団連に所属していないベンチャー企業や外資系企業は守る必要がありませんでした。また、政府主導に変更された現在でも守らなかったからといって罰則があるわけでもないため、多くの経団連所属企業においても、面接ではなく面談という形で6月以前に事実上選考を実施している企業などもあり、ルール自体が形骸化してしまっています。事実、2020年卒採用では、6月1日時点で7割の学生が内々定をもらっています(就職みらい研究所『就職プロセス調査』より)。

だからこそ、採用担当者は採用活動時期を、守るか守らないか、大企業と時期をずらすか、真っ向から対立するかと悩んできたわけです。しかし、より悩むべき本質は「採用手法」にあります。

2.採用力=学生ファーストの採用

なぜ、悩むべきは「採用手法」にあるのかをご紹介します。

 まず、時期の制限が採用活動に与えた影響として就職活動の長期化があります。本来はそうなるはずではなかったわけですが、ルールを守る企業と守らない企業に大きく分かれたことが原因でしょう。そうした就職活動の長期化によって、学生には負担をかけ、企業側には辞退者の増加など課題をより多く抱えることになりました。

 では、時期の制限を自由にしたらどうなるのか。もちろん、採用活動時期の自由化、いわゆる通年採用となれば、最初は混乱するでしょうし超早期に採用活動をする企業も当然現れるでしょう。今でさえ、採用力が低い企業にとっては内定辞退の多さは大変な問題になっていますが、より顕著になるかもしれません。さらに、企業の採用活動時期のさらなる分散化は、学生にとっても、前年までの事例が参考にできない、計画を立てづらい、などどんな就職活動をすればよいのかと混乱を生むかもしれません。

 しかし、超早期(低学年層)に採用活動を行なっても、相手の学生がそこまで熱くなっていないのでうまくいかないのではないかと思います。例えば、就職は結婚によくたとえられますが、18歳の頃に付き合っていた彼女と必ず結婚するのかというと必ずしもそうとは言えませんし、むしろそうではないことのほうが多いように思います。おそらく、超早期化は一部起こっても失敗に終わり、消えていくでしょう。

 事実、もう何年も自由に採用活動をやってきた外資系や新興企業は超早期化していません。大学3年生の夏のインターンから始まり春休みには終わるという時期に収束しています。これはかなりの試行錯誤の上でのことなので、きっと同時期に落ち着くのではないかと予想しています。 もし、そのように全業界の採用活動時期が重なってくれば、学生はうれしいはずです。今まで併願できなかった外資コンサルと商社を同時に受けることができますし、短期で決着がつくからです。この、学生にとって嬉しい、ということが非常に重要です。なぜなら、学生生活や学業の妨げにならないことを考慮した採用戦略を立てることで、採用力は格段に上がるからです。

 とはいえ、就活ルールの廃止など制度の課題は早急に解決するものではありません。つまり、採用力をあげるポイントは時期に悩むよりも「学生にとって最もうれしい採用の『やり方』はどうなのか」=「学生ファースト」を考えることにあります。

3.実は採用力をあげる「手法」はすでにある

 時期よりも手法と言うのは、実際、特定の手法が学生に負荷を与えているのを目の当たりにしているからです。また、就活に対する不安の理由として、面接が苦手やエントリーシートが大変などという理由がスケジュールの問題よりも上位にあげられているアンケート結果もあります。

 つまり、学生が就活において、より負荷に感じているのは、その採用手法なのです。特に、エントリーシートや紙の手書きの履歴書などの事前提出書類に強い負荷を感じています。中には、これらに1社数時間かける学生もいて、何十社と受けている人は膨大な時間を取られています。

続く会社説明会も、学生に負担となっていることがあります。例えば、自社採用サイトに載っているような情報をメインに説明してしまっている説明会や、リアルな場での会社説明会へ参加することが選考要件に入っている説明会などです。これらは、授業のある平日昼間に開催されることがあり、授業を欠席してまでリアルな説明会に出席してくれる学生も多くいるため、学生にとってうれしい手法だとは言えないでしょう。

しかし、これらのこうした手法は、活動時期の制限と違い、代替することで負担を軽減することができ、その方法が既にあります。例えばエントリーシートは廃止しても、面接来訪時などに少し早く来てもらって簡易な面接用の情報提供シートを書いてもらうということで代替できます。エントリーシートの代わりに、WEBなどでのパーソナリティテストの導入も時間やコストが削減出来てお勧めです。しかも、これらは選考の精度や妥当性も高いと言われています。また、会社説明会は、新型コロナウイルスの影響で移行されてきてはいますが、収束後であっても、動画で実施することはできますし、面接もWEB会議システムや録画面接などで代替できる時代となっています。

 一見、これらの代替施策は採用力を下げるように感じられそうですが、むしろ大幅に上げるものです。これまで導入した企業の事例を見ると、どれも採用力が向上しており、採用成功につながっていることが見られます。しかも、マンパワーも削減できたり、コストも下がったりしています。求人倍率の高い採用難時代であることも学生ファーストの施策の効果を高めています。

4.混沌とする活動時期に必要な「考え方」

 ここまで、採用手法にフォーカスを当てることをご紹介してきましたが、とはいえ、いつから採用活動をすればいいのだろうか、という疑問はあるでしょう。そこで、混乱を極めている活動時期おいて、時期がどうあろうともあまり変わらない「考え方」を最後に紹介いたします。

 まず、いつから採用活動を始めるかについては、優秀な人に会いたいのであれば、「早ければ早い方が良い」が原則です。優秀な人はすぐに採用されてしまうので、次第に市場からいなくなってしまいます。しかし、優秀な人に会えてしまうと、彼らは引く手あまたであるので、採用競合も強くなるのは必然です。つまり、会った後のフォロー(口説き。自社の志望度を高めていく活動)の力がなければ、結局、最後は入社までには結びつきません。つまり、早期から採用をしようと思うのであれば、同時に採用担当者(人事以外も含め)のフォロー力強化も実施しなければいけないでしょう。

 つまるところ、現実的にどの程度のフォロー力があるかを見極めた上で、どこまで早期から活動を開始するかを決めることが必要と言えます。

5.まとめ

 学生にとって嬉しい採用手法を実施することで、採用力をあげることができることをご紹介しました。さらに、適切な活動時期として、「自社のフォロー力に合った早期選考」をご提案しました。

 自社のフォロー力を把握し、自社のできることの中で学生に負担が少ない手法とはなにかを考えること、つまり己を知り相手を知ることが、採用成功に近づくポイントかと思います。

参考資料

・「就職プロセス調査(2020年卒)【確報版】「2019年6月1日時点 内定状況」」就職未来研究所 

https://data.recruitcareer.co.jp/research_article/20190607001/

・「採用活動時期の「自由化」で、学業を阻害しない採用となるのか ―採用活動の教科書・応用編―」新卒採用成功ナビ

https://saiyou-knowhow.recruit.co.jp/column/20180919

・2021 年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について

http://www.keidanren.or.jp/announce/2020/0331_betten.pdf

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曽和利光

曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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