1. 大学の授業の進め方はオールフリー

実は、僕はこの2022年4月から、とある大学の非常勤講師として、授業を担当することになりました。「ビジネス心理学A・B」という授業で、人と組織についての心理学や経営学(主に組織行動論)について教えています。

この大学はクオーター制を取っているので、週1回*3か月のスパンで、合計2コマの授業を担当することになります。

本業である人材研究所での仕事をしながら、週1回90分の授業(+その準備)をするのは、計6か月間とはいえ、結構大変で体力的に辛い部分もあります…。

ただ、僕自身、人生の中で「学校教育」というものに一度関わってみたかったし、大学の授業を受け持つことで、組織や人事のリアルを学生に伝える機会になると同時に、学生側のリアルを把握して、本業のお客様(人事の方々)に共有・発信できるメリットもあるため、僕にとっては願ってもないチャンスでした。

そんな「ビジネス心理学A・B」の授業は、何と履修人数100名越えの大人数授業です。

大学講師としては右も左もわからず、シラバスの作り方から、授業の進め方、テストの作り方などまったく想像もつかない状態で、ゼロから考えていかないといけませんでした。

コロナ禍で完全オンラインの中、入学したての大学1年生にとっては「お手本となる先輩と会えないので履修登録の仕方がわからない!」という話をよく聞きますが、僕の場合、「お手本となる先生と会えないので授業の仕方がわからない!」というのが最初の壁でした。

手始めに知り合いの先生方に色々とアドバイスを乞うていったのですが、驚いたのは「大学の授業の進め方?こうしなさいっていうルールなんてないよ。以上。」と断言されたことでした。

ただ、色々情報収集&考えた結果、決まったルールがないなら、とことん自分が良いと思うやり方でやろう、と思い切ってみることにしました。

授業が始まってまだそれほど時間が経っていませんが、これまでに意識して行っていることを少し紹介したいと思います。

2. 理論からではなく、身近なケースから説明する

まず、僕が授業中の説明で気を付けているのは、理論から先に伝えることはしないということと、理論的な説明はできるだけ簡潔かつ平易にする、ということです。

例えば、

“今日は『組織市民行動理論』について扱います。この概念の定義は、『自由裁量的で、直接的ないし明確に公式的な報酬システムでは認識されておらず、全体として組織の有効的機能を促進する、個人の行動のこと』を指します。”

という説明から始めた場合、学生はたぶん速攻で眠くなるか、スマホをいじり始めます。

今日はこの理論について説明しようと思ったら、まずできるだけ多く、しかも学生目線での「あるある」から始めます。

“中高時代を思い出してください。平日の部活終わりに皆でワイワイ片づけをしている時、自分以外の誰かが片づけに手こずっていて、自分の仕事が終わってから手助けした経験はありませんか?”

と話はじめて、

“こういう助け合いの科学のことを、専門的には組織市民行動と言います”

というように理論の説明につなげる。

理論⇒具体例という演繹的な説明だと頭に入ってこないのが、具体例⇒理論だと「なるほど!」という一種のアハ体験?になりやすいと思うのです。そのために「あーそういうことあるな」を学生からできるだけ引き出すように意識しています。

3. オンライン環境での学生たちの孤立・分断を防ぎたい

大学生活において、学生の本文は学び(学業)であるのはもちろんです。

ただ同時に、それまでの人生では出会わなかったような様々な人との一期一会の出会いも同じくらい重要だと思います。

学生時代の利害関係なしの付き合いが、社会人になった後の人生に大きく影響すると思うからです。

ただ、完全オンライン授業では、授業中たまたま隣の席で…というような偶発的な出会いはありません(この偶然が一番大切なのに!)。

なので、僕の授業では、オンライン上でも、毎授業度にランダムな組み合わせでの自己紹介タイムを取っています。その時に、「偏愛マップ」といって、A4一枚に自分の関心ごと・趣味などを好きにマッピングするツールを入れています。

自己紹介タイムは授業の内容とは直接的には関係ありませんが、少しでも偶発的な良い出会いを意図して取り入れています。

4. アクティブラーニングで、自分で考える力を養う

大人数の授業の一番の弊害は何かというと、ディスカッションやグループワークの機会を入れにくいことです。僕が大学生の時、100人規模の授業は全部、1コマ90分間、先生の一方的な説明を聞く時間でした。

今、90分話を聞くだけなら、絶対に、YouTubeの方が良いコンテンツがたくさんあります。

しかも、今はオンライン授業だからこそ、ブレイクアウトルームを使って、100人を30組くらいに一瞬で分けてディスカッションさせることができます。

先ほど挙げた自己紹介タイムでアイスブレイクしてもらった後は、授業内容に沿った組織上のテーマについて、グループで話し合いをしてもらうようにしています。

 

こんな風に、まだまだおもしろい授業の仕掛けを色々やれそうだな、と思っています。

コロナ禍で、僕たちが過ごした大学生活よりもたくさん我慢を強いられてきた今の大学生たちに、少しでも充実した大学時代を過ごしてもらうために。

いち非常勤講師として、少しでも力になれればと思います。

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安藤健

元々、臨床心理学を学んでおり、児童心理治療施設(虐待などで心に傷を負った子ども達の心理支援をする施設)にて、長らくインターンをしていました。 ここは、まさに心理学を「病の治癒」に活かす現場でした。そこから一転、心理学を「人の能力開発」へ活かしたいと感じ、人事という世界に飛び込んでみました。 現在では、こういった心理学の観点なども踏まえつつ、人事・マネジメント系コラムの連載をしています。

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