優秀な人材が採用できるスカウト型採用の2つのカギ

新卒採用市場においてナビなどの求人広告をはじめとして、学生と接点を持つ為に様々なアプローチ方法がありますが、採用難といわれる現在において「人が集まらない」や「優秀な人材を採用したいが出会えない」といったお悩みを抱えている経営者の方や人事、採用担当の方も多いのではないでしょうか。

 そんな中で近年「スカウト型採用」という手法が注目を浴びております。人材サービス会社が提供する候補者データベースなどから直接メッセージを送りやり取りをする「スカウト媒体」や既に働いている社員や内定者のネットワークを活用する「リファラル採用」などを積極的に取り入れている企業が増えております。 

約60%近くの企業が導入しており、採用手法として主流になってきているスカウト型採用ですが、母集団形成が出来ない、逆に辞退率が高くなった、工数が非常にかかるなど課題を抱えている方も多いようです。

 そこで今回は【運用に課題を感じている採用担当の方】や【スカウト型採用導入を検討している方】向けに、「スカウト型採用の成功のカギ」をご紹介いたします。

1. スカウト採用とは攻めの採用

まず初めに、「スカウト型採用」とは何かについてご説明します。採用には大きく二つの種類があります。 一つ目が「オーディション型採用/PULL型採用」、そしてもう一つが「スカウト型採用/PUSH型採用」です。

オーディション型採用はナビなどの求人広告や人材紹介を活用し、就職希望者(学生)や、転職希望者から応募が来たら選考を行うというものです。 いわば「待ちの採用」となります。

 一方で、「スカウト型採用」は人材サービス会社の保有している候補者データベースや社員や内定者のネットワークを通じて、採用ターゲットを探し、企業側からアプローチをかけ、「選考を受けませんか?」と声をかけるものです。 いわば、こちらは「攻めの採用」です。一般的にダイレクトソーシング、ダイレクトリクルーティングと呼ばれています。

 オーディション型採用の場合、学生が興味を持って応募をする為、どうしても企業の知名度や採用ブランドに影響を受けてしまいます。どうしても知名度がある企業などが優位になることが多いです。

しかし、スカウト型採用であれば、企業側から直接アプローチが出来る為、学生の自社への興味とは関係なく、採用に繋げることが可能です。 例えば、芸能事務所の●●プロなどでは、毎年大規模なオーディションを実施し、全国から芸能人を志す方が集まってきます。 しかし、そこまで知名度がない芸能事務所は原宿など若者が集まるエリアで原石となりうる方に直接声をかけ、スカウトを行うようなイメージです。

 このスカウトによって、知名度がなくとも自社の採用ブランドを超える採用が実現可能となります。 採用難が謳われ、採用競争が激化する昨今でスカウト型採用に注目が集まる理由はここにあるのです。

 しかし、スカウト型採用はコツコツとスカウトメールを送る為、工数がかかる点や、オーディション型採用以上にフォローや動機付けが必要となる為、採用担当者のスキルが求められるのも事実です。 成功させる為のカギについてはこの後ご紹介します。

 ここでオーディション型採用、スカウト型採用両者を整理したものをのせておきますので、ご参考ください。

PULL型とPUSH型

 PUSH型のアプローチは、コストはそれほど掛からないものの、とにかく工数がかかります。 マス向けの求人広告のように、一回で大勢の人を集めることはできない為、対象者を探し、スカウトを打つといった地道な作業が求められるからです。

 ただ、地道なPUSH型アプローチでは、PULL型では会えないレベルの学生にアプローチが可能です。 また、自社の採用ブランドが候補者にきちんと伝わっていなくても直接顔を合わせて話すことができれば修正は可能です。

 つまり、PUSH型は、優秀な学生を採用するような「分不相応な採用」をするのであれば、必ず取り組むべき手法なのです。

 

スカウト媒体を使う方法以外にも一部手法例を紹介します。

スカウト型採用の手法例

・内定者や新入社員からリストアップしてもらう ※リファラル採用

・OB、OG訪問

・OB、OG帰省:OBOGの方が出身大学のサークル、部室、研究室に顔を出すこと

・学内説明会/「学外」説明会

・友連れ:既に接触している学生に友人を紹介してもらう

・学生団体/イベント(ビジネスプランコンテスト等)協賛

2.成功のカギ① ~カジュアルな個別面談から始める~

 ここまででスカウト型採用/PUSH型、オーディション型採用/PULL型について説明いたしました。

それでは、スカウト型採用を成功させる為にはどのようなことを意識、注力していけばよろしいのでしょうか。

 まず一つ目が、「カジュアルに始める」ということです。 スカウト型採用の場合、初回接触時に学生側に応募意思がないことも多々ある為、初回でいきなり面接や会社説明会を行うことは避けた方がいいでしょう。 スカウトをされて来たのに突然通常フローと同じ選考を受けるとなると、学生の中で醸成されていた「特別感」を壊すことになりかねません。 その為、基本は個別面談が良いでしょう。

 また、できるだけカジュアルな場で行うことをおススメします。オフィスに遊びにきませんか?と誘うのもありですが、学生の大学の近くや、中途採用であれば会社の近くのカフェでに良いと思います。

何故なら「あなたのためなら、どこへでも行きますよ」という姿勢を見せることも大切なのです。

 

初回接触で興味を持ってもらい選考に進んだ場合でも、できるだけ選考前のハードルを高くしないように心掛けた方が良いでしょう。 通常の選考では履歴書やエントリーシート(中途採用の場合は職務経歴書)を持参してもらうことが多いと思いますが、スカウト型採用の場合はできる限り不要な書類提出を求めないようにしましょう。 直接話していく中でヒアリングをして情報収集する事も可能なので、書類がないと選考はできないなんてことはないと思います。

ここで一つ注意していただきたい点があります。カジュアル面談を謳った際は「志望動機」を聞くべきなのか今一度よく検討しましょう。 企業側からスカウトをしていて、「一度カジュアル面談でざっくばらんにお話ししましょう!」と言いつつも、いざ対面したら「志望動機はなんですか?」と聞く担当者もいる様ですが、これは候補者側からしたら「(え、そっちがスカウトしてきたのでは、、、)」というように不信感に繋がりかねません。 もし、聞くとしたら聞き方を検討しましょう。 例えば、「ざっくりでもかまわないのですが、弊社のどういうところにピンときたとかありますか?」ぐらいでいいのではないかと思います。

 

 また、慎重に進めて時間をかけすぎるのも問題です。 応募をしようと思ってから2週間~1か月程度で決着をつけないと辞退率が高まるというデータもある為、仮に応募してくれるということになったら、スピード感を持って対応するようにしましょう。

企業によっては会議室の数が限られていて、調整に時間がかかるという事情もあるかもしれませんが、社内、上司に話をつけて、融通を効かせスピーディーに進めることをおススメします。

3. 成功のカギ② ~フォロー体制の強化~

 続いて、スカウト型採用を成功させる上で最も重要といっても過言ではないのが、「フォロー体制」の強化です。

 スカウト型で集めた候補者集団は、極端な場合、オーディション型採用で集めた候補者集団よりも内定者の出現率が10倍ほど高いこともあります。

ただ、優秀な学生は「どこでも引手あまた」なので、辞退率も必然的に高くなります。せっかく苦労してスカウトを送り、いい学生を見つけても、「口説き」に時間を割かなければ「いい学生には会えたけど、結局みんなうちには来なかったな・・・」という非常に悲しい結果になってしまいます。 当たり前ですが、採用活動は母集団を作ることが目的ではないのです。 最終的に自社に入社を決めてくれなければ意味がありません。その為、スカウト型採用を行うにあたってはフォロー体制の強化が必要となるのです。

フォロー体制の強化方法には様々なやり方があります。 ここではいくつか具体例をあげておきますので、是非ご参考ください。

フォロー体制の強化方法

・最終面接の前段階でフォロー担当者を学生に付けて、一緒に伴走して内定を得る「同志」的な関係を構築する

・学生をフォローする担当には、相性の良い「同質タイプ」をあてがう。(「同質タイプ」ではない「補完関係」はリレーション構築にやや時間がかかる)ドラフト会議的なもので担当者を決めても良い

・適性検査などを用いて、学生と面接官のタイプを合わせる(この場合、同タイプの人はジャッジが甘くなってしまうことに注意 ※類似性効果)

・自社の採用上のアピールポイントを把握の上、タイプ別の訴求ポイントに基づいてトークパターンを事前に作成する(採用競合との差別化ポイントについても事前に検討し、採用担当者がきちんと話せるように訓練しておく)

・できるだけ高頻度で学生と接触し、担当者と学生の間に深い人間関係を構築する(接触回数が多いと相手に好意を抱く)

・自社に関する新分野雑誌の記事、書籍など社会的な認知の証拠となるパブリシティを集めて、適宜学生に渡す(親、配偶者といった候補者に強い影響を及ぼす人物の手に渡り、その人からも自社を推薦してもらえる効果を見込む)

 

この様なフォロー体制を徹底的に強化することで、手間・工数をかけて集めた「分不相応」に優秀な学生が最終的に自社を選んでくれるのです。

そして、高いレベルの人材を採用することは、会社の成長に繋がります。

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。

 今回はスカウト型採用とオーディション型採用の違いや、スカウト型採用を成功させる為のカギをご紹介させていただきました。

 スカウト型採用はオーディション型採用と違い、沢山の母集団を形成するという点では確かに不向きだと思います。 また、採用担当者にかかる工数も多いのも事実です。

しかし、先述した通り採用担当がやるべきことは何も母集団を沢山集めることではなく、自社にとって必要な人材を採用することです。

 今回の内容を踏まえて、皆様の採用活動の一助になればと思います。

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曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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