芳賀 巧
「パワーバランス察知力」の大切さ
僕たちの仕事では、経営層の方々など、自分の立場から考えると身分不相応な方々とお仕事をさせていただくことが非常に多い。
経営層の方々は、何らかのスキルや能力に長けた方がほとんどではあるのだが、経営層の方々それぞれ、人事や財務、事業など「持場」を全うされているため、最終的には持ちつ持たれつで協力し合いながら経営をされている会社がほとんどであると思う。
(時折、スーパー社長がすべてやられているというケースもありますが、組閣し会社などの組織体として活動されている多くの場合の経営層の方々を指しています)
我々がサポートさせていただくのは、主に人事制度設計や組織開発、ビジョン・ミッション・バリューの策定などの領域になるが、そのような組織運営に関わる方針は、あくまでの事業遂行を組織として行う上での方針となるため、原理原則に乗っ取るか、もしくは組織の現状を踏まえて検討するかなど切り口はいくらかあるものの、最終的には「決め」の世界でもあったりする。
しかし、その「決め」に至るまでにどこまで深く、広く方針決定に関わる議論をしたのかによって、その「決め」の納得度が変わってくると思っている。
納得度があるのかないのかということは、この先に議論によって決まった方針に則って様々な施策を行った上で、数年後の組織状態を改めて顧みたときに「なぜ当時あんな決定をしてしまったのか」となるのか、「当時の仮説から考えると適切だったが、再度新たに方針を策定しなければならないな」となるのかという、一定の結果が見えてきた段階で振り返り、より先を検討していく状態になった際に大きな違いをもたらすと個人的には考えている。
なので、僕たちはその「決め」を(あくまでも現状を前提とした議論にはなるが)どこまで納得度の高いものにできるかが大変重要だ。
そこで大切になってくるのが、経営層の方々の「パワーバランス」がどんな状況なのか、ということだ。
概ね人事・組織関連の議論は、拡散と収束の連続になるので、「話が盛り上がるかどうか」というのも、納得度を生み出す大きな要因であると考えているが、話を盛り上げて円滑に進めていくためには、以下のようなことを察知することが大変重要だと思う。
・普段社内でどのように議論を進めているのか
・誰が主に発言をするのか
・どの領域は誰が詳しいのか
・どんなこだわりがあるのか
・業務外ではどんなつながりがあるのか
というような「パワーバランス」を正確かつスピーディーに把握することが大切だと感じる。
組織分析の結果からお伝えしなければならない(どちらかというと)悪い事実なども、どのように伝えると議論が白熱していくか、誰に向かって話すと良さそうか、などその辺りの細かくかつ丁寧な配慮をしながら、「パワーバランス」を捉えて話を展開させていくことが、僕たちの仕事の一番の腕の見せ所ではないかと思う。
とかなんとか、偉そうに作文をしてみたが、僕も失敗の連続であって、人間にはやはり「気分」や「相性」などというものも存在しているため、どれだけ考えても思い通りに行くことは殆どない。(「気分」や「相性」という言い訳をしている時点で、ただ単に能力不足かもしれないが)
ただやはり、それだけ考えても想定外のことが起こりうる人間や組織は本当に面白い(なんて言っては失礼だが)なと感じる。