人生で何番目に好きな人と結婚すべきか

1.なぜ2番目が良いのか

最初に前置きしておきますと、今回はあまり、というかまったく人事は関係ありません。

ただ、人間の一見不合理な一面を見るという意味では同じテーマだと思っています。

 

「結婚相手はいちばん好きな人ではなく、2番目に好きな人を選んだ方が良い」という話を耳にしました。本当でしょうか?

最近結婚した私からすれば(といっても1年以上前ですが)、相手にとって私は2番目の人だったのかもしれないと思うと、正直少し悲しくなります。しかも、私自身はどうだったかというと、もちろん一番好きな人を結婚相手にしました。

大体、その時付き合っている人が、人生で2番目に好きかどうかなどわかる人がいるのでしょうか?

と、そもそもの疑問はありつつ、どうしてこんなことが言われているのかを私なりに考察してみました。

まず良く言われる大きな理由は、一番好きな相手には自分を最大限よく見せようとしたり、良く思われたいという気持ちが強く働いたりします。しかし、それは短距離走の恋愛ではいいかもしませんが、長距離走の結婚では気疲れてしまう。だからむしろ追いかけるよりも相手に追いかけられる方が楽だ、というものです。心理学では「興味加減の法則」といわれるものがあり、相手に対する関心が薄い方が強い交渉力をもつといわれています。平たくいえば、「追えば逃げる、逃げれば追われる」ということです。しかし、お互いが2番目に好きな人であった場合、どちらも逃げてしまい、追われることはないのではないか、とも思えます。これでは何やら冷めきった結婚生活が予想され、誰も幸せになれなそうです。

2.恋愛と結婚の根本的な違い

また、別の理由から考えてみます。そもそも、恋愛はロマンス、結婚はリアリズムと言われます。恋愛関係は、不安定な人間関係の中で発展し、緩急をつけた緊張と緩和がスリルを生むわけです。謎めいたあの人が段々自分にだけ明かす本性。これも緊張と緩和です。

いわゆる草食系と呼ばれる奥手男子が自分の前でのみ肉食系になるギャップ。これも緊張と緩和です。「恋愛体質」といわれる方は、このスリルを求めて恋愛を繰り返しているような気がします。このように腹の探り合いがたくさん行われる、“恋なんていわばエゴとエゴのシーソーゲーム”なわけです。

しかし、結婚は、契約された役割関係です。そこには権利と義務が発生し、家庭という運命共同体を維持するためには感情論を抜きにした行動が必要な場面もあります。

例えば、法律で「夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。」(民法752条)と定められています。相手のことが嫌いになったからといって夫婦共同生活を一方的に放棄することはできないのです。しかし困ったことに、一番好きな相手は一番嫌いになってしまう可能性も秘めています。「愛の反対は無関心」で「好きと嫌いは紙一重」だからです。

もしくは、一番好きだからこそ、自分を殺して相手に迎合してしまう可能性もあります。自分のすべてを差し出すことが本当にどんな時でも相手のためになるのでしょうか。

もし2番目に好きな相手であれば、好きも嫌いもほどほどで、夫婦二人にとって益をあるベストな判断を冷静にできるかもしれません。

このように考えると、いまや当たり前になった、恋愛関係の延長で結婚に至る恋愛結婚も考え物です。恋愛関係で求める相手の要件と婚姻関係で求める相手の要件が異なり、恋愛→結婚という関係性の移行の中で、果たしてその見極めが適切にできるかという疑問があるからです。逆に、私たちの祖父母の時代にはいまだメジャーであった「お見合い結婚」は、実は冷静に結婚相手としての見極めを行う場、という意味では効果的であったように思います。

3.人はどこか哀愁を好む

ここまで様々なお話を挙げてきました。

最後に、より人間の本質を物語っているような気がする理由を挙げておきます。

人生で2番目に好きな相手を結婚相手にすべきという理由は「人は、不完全な、どこか満ち足りないことに対する哀愁を望んでいるから」です。

私たちは、完全よりも不完全さに美しさを感じます。

売れるアーティストの歌詞には、古今東西それが表れています。

自分の人生さえも、誰と結ばれるかさえもタラレバを胸に秘め、時々今の人生とは異なる、選ばなかった別の人生に思いを馳せる。もちろん心理学ではあくまで『今ここを生きる』のが幸せの条件と言われていますし、別の人生に夢を見すぎて現実に戻ってこれなくなるのはかなりまずいです。しかし、自分の人生のifに思いを馳せるのは、『今ここ』の大切さを再認識させてくれる人生のスパイスかもしれません。

そして、それが手っ取り早く叶うのが、2番目に好きな相手を結婚相手にする、ということなのかもしれません。

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安藤健

元々、臨床心理学を学んでおり、児童心理治療施設(虐待などで心に傷を負った子ども達の心理支援をする施設)にて、長らくインターンをしていました。 ここは、まさに心理学を「病の治癒」に活かす現場でした。そこから一転、心理学を「人の能力開発」へ活かしたいと感じ、人事という世界に飛び込んでみました。 現在では、こういった心理学の観点なども踏まえつつ、人事・マネジメント系コラムの連載をしています。

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