採用スケジュール設計で重視するべき4つのステップ

 ここ数年、就活ルールの変更はなされていませんが、果たして自社の採用スケジュールも例年通りでいいのか、あるいはどのような採用スケジュールで進めるべきか悩んでいる人事担当者も多いと思います。本記事では、採用スケジュールを組む際に重視すべき4つのステップをご紹介します。

1.一般的な採用スケジュールと早期化

 新卒採用のスケジュールは、学生生活や学業の妨げにならないように、という倫理的観点から経団連によって決められたものがあります。現在は経団連ではなく政府主導で大学3年生の3月1日から広報活動、大学4年生の6月1日から採用活動を政府主導の新卒採用ルールとして設定されていて、このスケジュールは2017年卒採用から続いています。

 しかし、実際は選考直結型インターンシップなど様々な手法で水面下で選考が始まり、3月や4月には内定を出している企業も少なくないです。事実、2020年卒採用では、6月1日時点で7割の学生が内々定をもらっています(就職みらい研究所『就職プロセス調査』より)。

 こうした早期化の影響は、採用難の現代の企業に追い打ちをかけています。早期に獲得した内定者が大手企業で内定を獲得し、辞退するという現象が起こっているのです。そのような状況の中でいつから採用活動を始めるかという疑問については別記事(「時期」ではなく「手法」にフォーカスで上がる採用力)を参照していただくことにして、本記事では新卒採用の全体としてのスケジュール設計について考慮すべき重要なポイントをご紹介します。

2.新卒採用特有の3つの特徴

 まず、新卒採用ではスケジュール設計をすることが非常に重要です。その理由は、新卒採用に特有の3つの特徴があるからです。

採用期間が長い

 中途採用は、採用を企画してから入社までが2~3ヶ月程度というのが平均的な期間ですが、新卒採用では企画をし始めてから入社まで1年半ほどかかるのがほとんどです。さらに近年では早期化の影響もあり、より長期化してるので、一層スケジュールを綿密に組む必要性が増しています。

時期によって応募者の動向に特徴がある

 1年を通して応募者の動向に大きな変化の少ない中途採用と異なり、新卒採用では時期によって応募者(学生)の動向は大きく異なります。

 例えば、学事日程です。学校の学事日程(試験シーズンや長期休暇)は国立と私立でズレがありますし、体育会系の部活動に所属する学生は引退時期なども種目によって異なります。他にも、新卒向け就職サイトのオープン日である3月前後や、大企業の採用選考が集中する6月前後でも学生の動向や質は大きく変わります。

 このように、社会環境や採用ターゲットによって新卒採用のスケジュールは大きく影響を受けるため、新卒採用活動を考える年度の情勢を押さえておくことは大変重要です。

ポテンシャル採用である

中途採用では、職務経歴における実績から具体的な事実に基づいて自社への適性を推量できるので、比較的容易に選考活動を行うことができます。対する新卒採用では、ほとんどの学生は職務経歴がありません。学生時代の活動は授業やゼミ、部活動・サークル、アルバイトがほとんどで、面接する側に相応のインタビュースキルが求められます。また、その時点での実績のみをもとに選考するよりも、学校での学業や課外活動からわかる基礎的な能力や、面接時のコミュニケーション等から、候補者の自社における可能性を探る姿勢が求められます。

 つまり、中途採用より多くの時間を1人の候補者に費やし、より多くの候補者と会うことが求められるため、効率的なスケジュールを設計することが採用成功にはかかせません。

 さらに別の背景として、そもそもの学生の就職活動量が減っている(現在では、学生一人あたりのエントリー社数は10社程度)こともあり、より時期の狙い撃ちが重要となってきています。

3.採用スケジュールの設計を考慮するうえで大事な4つのステップ

 新卒採用の成功に重要な採用スケジュールは、各社の採用戦略に応じて変化させる必要があります。そこで、採用スケジュールを設計するうえで考慮すべき4つのステップについて簡単にお話しします。その4つのステップとは、①求める人物像、②プロモーション、③選考プロセス、④フォローです。

1.求める人物像

 まず重要になってくるのは「求める人物像」の策定です。求める人物像の策定には、「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」の2つの方法があります。演繹的アプローチとは、自社の事業や組織の分析から演繹的に導き出す方法です。一方、帰納的アプローチとは、現在の自社で成果をあげている人材が持っている能力や性格、志向を抽出する方法です。ただし、求める人物像に含まれる人材の特性の要素を決定する際に、念頭に置いておかなければいけないことがいくつかあります。

 1つは最小限の数に要素を絞ることです。沢山の要素を盛り込むと対象者が限定されてしまいます。そのうえ新卒採用市場では、まだ成長途上の荒削りな人材が多く、ある能力はかなり高くても、ある能力はやや劣るということでこぼしてしまう人材が沢山います。

 次に、比較的先天的な要素を盛り込むことです。社内の育成パワー次第ではありますが、入社してから十分育成することのできる要素は、できるだけ採用時の要件としない方が賢明です。1つ目と同様に、沢山の要素を盛り込むと新卒採用市場ではそのような人材はなかなか発掘できないからです。

 最後に、抽象的な表現の要素にしないことです。一義的に規定したい求める人物像において、解釈の余地があってはいけません。例えば、地頭(じあたま)という同じ言葉を使っても、面接官同士で想定している内容が違ってしまっては適切なスクリーニングはできないでしょう。

 また、ある瞬間に策定した人材要件は、すぐに陳腐化してしまう可能性があるということも忘れてはいけません。環境の変化の激しい現代では、その要件のセットが次の時代にもすべて必要かどうか、検討の必要があります。

 こうして策定された求める人物像から、その要件にマッチする人材が最も多く活動している時期を想定することで、効率的な採用活動時期を検討することができます。

2.プロモーション

 次は、求める人物像にいかにリーチするかという採用プロモーションです。採用プロモーションには、大きく分けるとPULL型とPUSH型があります。PULL型とは、リクナビや合同説明会などのマスメディアを使い、学生の側からアプローチ(エントリー)してきてくれるのを待つタイプの採用プロモーションを指します。一方、PUSH型は、リクルーター制度や、ゼミや研究室への訪問など企業の側から学生にアプローチして、自社に適した人材を探しにいくタイプの採用プロモーションを指します。

 これら2つの方法には対立する特徴があります。

 1つは、集客力です。PULL型では一度に数千~数万単位で学生のエントリーを集めることもできますが、PUSH型ではたいていの場合、せいぜい数百~千ぐらいの学生にしか接触できません。

 もう1つは、集まって来る人材の特徴です。PULL型は学生からやってくるわけですので比較的志望度の高い層が多いと考えられます。このため、選考途中での辞退率は相対的に低くなります。しかし、現状の自社の採用ブランドにフィットするタイプが多く集まって来るため、応募者の同質化や自社の採用ブランド以上の人材の採用がしにくいということがあります。一方、PUSH型では、そもそも最初は自社に全く興味がなかったような学生にもアプローチしますので、必然的に辞退率は高くなってしまいます。が、自社の「ファン」(志望度の高い学生)以外の学生に出会うことができるというメリットがあります。

 これらの特徴から、両者の使い分けや比重のバランスを考えることが重要です。その指標になるのは、「自社の採用ブランド」と「求める人物像」のレベルの相対感です。例えば、自社の採用ブランドが採用上の競合企業と比較して高く、かつ、学生に浸透しているイメージと求める人物像から想定される企業のイメージとが合致しているの場合は、効率的なPULL型採用に比重を置くのがよいと思います。逆に、自社の採用ブランド以上のポテンシャルを持つ学生を採用する、いわゆる分不相応な採用をしたい場合は、非効率ではあっても、PUSH型プロモーションを可能な限り導入するべきであると思います。それによって採用母集団形成における期間等も変わってくるでしょう。

3.選考プロセス

 いよいよ、求める人物像を設計し、プロモーションをかけて集めた採用母集団をいかに選考して絞り込んでいくかについて簡単にお話します。選考プロセスは3つの要素から構成されるべきです。

 選考プロセスを設計する際に、最初にすべきことは、内定率や書類選考通過率などの各ステップごとの歩留りの数字の推定です。自社の採用ブランド力や、採用活動にかけられるコストやマンパワーなど複数の要因から数字を推定をします。その際、自社の過去の数字だけをよりどころに「率」を推定してしまいがちですが、それには実は落とし穴があります。それは、過去の自社の数字がベストプラクティスであるかどうかわからないということです(多くはそうではありません)。

 また、それでは、問題点も発見できないまま選考プロセスが改善される機会は失われます。そのために、普通は(あるいはベストプラクティスは)どのぐらいの「率」なのかについての感覚が必要です。その時の採用環境にもよるので精緻ではありませんが、例えば内定率(内定者÷受験者)は、ナビや大規模イベント等のマスメディアによる母集団の場合は約1%~数%、リクルーターやOB紹介などのネットワークによる母集団の場合は約10%前後、などです。

 こうして歩留りが想定できれば、後はそれを踏まえてステップ(選考回数や実施期間等)やコンテンツ(面接にするのか、筆記試験なのか等)を考えます。ここで重要なのは、世間一般の採用における常識に囚われずに、自社の採用課題を見据えて、目的に合ったものにすることです。例えば、エントリーシートなどは出させるものと思ってしまいがちですが、もちろんそんな制約はありません。

 大事なことは「なんのためにそれをするのか」ということです。採用目標人数に比してエントリー数が多く、優秀層を見つけ出すのに苦心しているなら、説明会の回数を減らす、発見した優秀層向けに飛び級的選考プロセスを用意するなどの施策がよいでしょう。逆に、採用母集団形成に苦心している会社なら説明会は小分けに多回数実施し、学生が参加しやすいようにするなどの設計が必要です。こうして策定されたステップやコンテンツによってスケジュールも変わってくるでしょう。

4.フォロー

最後に、採用活動上非常に重要な採用担当者の仕事である内定者フォローについてです。最終選考合格者(内定者)に入社意思を固めてもらい、内定を受諾していただくことこそ、採用担当者の仕事の本質の1つです。

 まず最初に、内定者のフォローに力を注げるように、採用担当者のマンパワーの配分を見直すことから始めましょう。借りることのできる現場の社員や管理職層の力次第ではありますが、選考プロセスを工夫して、採用担当者が優秀層のフォローに一番時間を使っているという状態を作ることが重要です。

 ところが、採用活動の初期工程である説明会や適性検査、1次面接などに時間の多くを使い、隙間時間で内定者フォローをしているようなケースが多く見受けられます。しかし、例えば内定率が1%の会社の場合、面接官1対学生4の1時間の1次面接で100名の学生に出会ったとすると、25時間をかけてやっと1人の内定者に出会える計算になります。であるならば、数回のスクリーニングの後にようやく見つけ出した1人の内定者と2時間腹を割ってお話をすることの方が、価値が高い、効率的と言えるでしょう。

 このことを考えれば、選考プロセスにおいて、初期の説明会や1次面接の頻度や人数、加えてそれらを誰が担当するのかについては、慎重な判断が求められます。採用担当者が内定者のフォローに時間が割けない状況であるならば、初期選考において適性検査の導入やアウトソーシングの活用を検討するべきです。

4.まとめ

 特殊な市場である新卒採用において、採用スケジュールの設計が非常に重要な作業であること、その際に参考とするべきものとして①求める人物像、②プロモーション、③選考プロセス、④内定者フォローという4つのステップについてご紹介いたしました。

 本記事を機会に、この4つのステップを踏まえて効率的で効果的な採用スケジュールを設計できているか、今一度検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料

・「就職プロセス調査(2020年卒)【確報版】「2019年6月1日時点 内定状況」」就職未来研究所 

https://data.recruitcareer.co.jp/research_article/20190607001/

・2021 年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請について

http://www.keidanren.or.jp/announce/2020/0331_betten.pdf

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曽和利光

曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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