芳賀 巧
タイムカプセルを開けたくなるタイミング
「何年後にみんなで集まって掘り起こそうね」という決まり文句で埋めたタイムカプセルを僕は一度も掘り起こしたことはない。ただ、そのような物理的なタイムカプセルではないものの、例えば音楽や映像や画像などが起因となり、昔を思い出し、思いにふけるといった経験は誰しもが持っているのではないかと思う。
個人的には、そんなモードに自分が入った際には、昔を思い出し、当時のことに思いを巡らせて、自分自身と対話するような状態に陥ることが多い。当時好きだったことや悩んでいたことを思い出しては、今の自分とを比べ、「あー、俺全く変わってないなぁ」と一人ニヤニヤしていることがほとんどだ。
しかし、SNSの普及により、そのような自分との対話を周りと共有し、「あの頃は楽しかったね」と仲間と昔話を共有することが昔を思い出すことの楽しみだ、という派閥(と勝手に言っているだけですが)がすごく多くなってきているように感じる。
どちらかというと根暗な僕は、昔を思い出しては一人ニヤニヤしていることや、変わっていない自分に対して安心しているようなところがあり、そんな姿を周りと共有するなんて、すごい勇気の持ち主だなぁと羨ましい気持ちで見ているのだが、一つだけ言いたいことがある。それは、そういう方々にありがちな「『あの頃は』楽しかったから戻りたい」という、昔よりも今のほうが楽しいという発言がよく見られることだ。
これは僕が少数派なのかもしれないが、「やっべぇ、今めっちゃ楽しい」とその場で感じたことはおそらく無く、振り返ってみることで、「楽しさ」を相対的に比較し「あの時は楽しかったんだなぁ」と感じることがほとんどだ。
何が言いたいかというと、「楽しさ」というのはアップデートされるものかつ、振り返らないと感じにくいものだと思うので、「今が一番楽しいじゃん」と(嘘でも)思って行動することが、結局一番楽しいということなのではないかと思う。
もちろん、こんな大変な状況下の中で、今がいちばん大変だという方も多くいらっしゃると思うし、僕が恵まれているだけかもしれないが、辛かったことが思い返すと良い経験だったと語られている方々はたくさんいらっしゃるし、最終的には「楽しかった」という思い出に昇華することもあるのではないかと信じで、これからも僕は今が一番楽しいと思い続けて生きていきたい。