内定承諾してもらうための内定の出し方

採用担当をされている方であれば、一度は候補者の内定辞退の連絡を受けたことがあるのではないでしょうか。是非自社に入社してほしいと思っていた候補者の内定辞退は、採用担当にとって非常に心苦しいものだと思います。

株式会社リクルートキャリアの就職みらい研究所の就職プロセス調査によると、2019年卒大学生においては、卒業時点での内定辞退率が67.8%という調査結果を発表しました。実に約7割の学生が内定辞退をしているのが現状です。

 自社に合った人材や、優秀な人材を見つけ、接点を持ったとしても、最終的に入社してもらえないのであれば、今までの苦労が水の泡となってしまいますが、内定の出し方一つで承諾されるか、辞退されるかが左右されることもあります。
今回は自社に承諾してもらうための具体的な施策や工夫をご紹介します。

採用活動において、候補者に内定を伝える採用担当の方は是非ともご参考ください。

1.内定を出す前からフォローをする

 まず、最初に重要なのが「内定を出す前からフォローをする」ということです。これは新卒採用だけではなく、中途採用でも同じことが言えるでしょう。

 選考中は学生に対して人事の顔「のみ」を見せ、内定を出したら擦り寄るということでは応募者は冷めてしまいます。ですので、最終面接前からフォローを行い、「最終面接を一緒に頑張ろう!私も応援しているよ!」といった共闘の姿勢や、一緒に最終面接合格に向けて伴走する姿勢でフォローを行い、関係構築をしておくことが重要となります。
 もし、本当に採用したい人がいれば、最終面接よりも前の1,2次面接から共闘の姿勢を取っても良いでしょう。

 候補者をフォローをする際のポイントについては、当サイトの別の記事をご参照頂ければ幸いです。 

2.内定を出す際の4つのポイント

実際に企業が候補者に内定を出すにはどのような点を工夫すればいいのでしょうか。 ここでは4つのポイントをご紹介します。

ポイント1:内定を出すタイミングは、「入社意思が固まってから」

候補者に内定を出すタイミングは候補者の「入社意思が固まってから」がいいでしょう。 「最終面接合格」=「内定」ではなく、「最終面接合格」×「入社意思決定」=「内定」とするイメージです。何故なら、内定を出した時点で、企業側は選ぶ立場から、選ばれる立場へと逆転してしまうからです。 心理学の分野では一般的に相手に対する関心が薄い方がより強い交渉力を持つと言われています。これは「興味加減の法則」といわれる心理バイアスです。いわゆる「追えば逃げる、引けば来る」わけです。なので、内定は慎重に出すことをお勧めします。優秀な相手でも、安易に内定を出しては、相手から軽く見られて、かえって入社の意志を損なうことも考えられるため、ここは工夫が必要です。

ポイント2:機械的にあっさりと合格出しを行わないこと

 候補者に最終面接合格を伝える際は、機械的にメールや電話等であっさりと合格を出すのではなく、可能であれば呼び出して直接合格を伝えるといいでしょう。
例えば、「最終面接の感想を機聞きたい」という形で呼び出すといいでしょう。地理的制約などで、直接会うことが難しい場合は、Web面談ツールや電話が望ましいと思います。いずれにしてもメールで簡単に済ませない方ことをお勧めします。

ポイント3:合格を伝える人物は関係性が構築できている人 

候補者に合格を伝える人物にも工夫するといいでしょう。内定を伝えるのは、下記のいずれかの方をお勧めします。

■内定者と関係が構築されている人事担当者(前述したフォロー担当者など)
■内定付与の権限を持つ責任者クラスの人物

 最終面接フェーズにおいて、初めて接点を持つ人から「最終面接合格です!おめでとう!」と言われるよりも、それ以前から関係性が構築されている方から言われる方が、候補者は嬉しく感じるはずです。担当者にとっては少し手間がかかってしまうかもしれませんが、最後のアクションを怠らずにやっていきましょう。

ポイント4:候補者一人ひとりに合わせたオーダーメイドで内定を出す

 最後のポイントは、内定の「出し方」に関するアプローチ方法です。基本的な考えとしては、一人ひとりに合わせたオーダーメイド方式で内定を出すことをお勧めします。何故ならば、人が意思決定をする際には、個々人によってどういう考えで意思決定を下すかが異なる為です。

 人の「意思決定スタイル」は一般に、「何かを決める際に、多くの情報を集めるか、少しでいいか」と、「スパッと決断するか、いくつかの選択肢を並べて長考するか」という2軸によって、下記4つに分類されます。

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① 論理型

② 統合型

③ 決断型

④ 柔軟型

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 前者の軸は与えるべき情報量の判断に繋がり、後者の軸は内定受諾を迫るタイミングに繋がります。採用担当者は、候補者の意思決定スタイルごとに、入社を意思決定させるアプローチを変えなくてはなりません。

 次に、各スタイルごとのアプローチ方法をご紹介します。

 

① 論理型へのアプローチ

 論理型は、「多くの情報を得た上で理論的に分析して、きっちりと1つの答えを出す」タイプです。こうした人は筋の通っていないことや矛盾を嫌います。コンサルタントや事業参謀に多いタイプです。

 このタイプに対しては、見せたい情報をあらかじめ考え抜き、相手にとって矛盾のないストーリーを作れるように準備してから入社の決断を迫る必要があります。

 

② 統合型へのアプローチ

 基礎研究の学者などに多い統合型は、「様々な可能性を吟味した上で答えを出す」タイプです。その為、このタイプの方はなかなかすぐには意思決定を下しません。

このタイプに対しては、とにかく「待つこと」が必要となります。これは決して放置しろというのではなく、継続的に接点を持って、様子を見ながら自社の情報を伝えつつ、相手の決断を待つのです。

 

③ 決断型へのアプローチ

 決断型は与えられた情報が少なくても「パッと見て、パッと決める」タイプです。ですので、自社に興味を持ってくれたら、あとは押しの一手が必要です。妙な駆け引きなどはせずに、「我々は君と一緒に仕事がしたい」、「うちに決めてほしい」と伝えることで、タイミングさえ逃さなければ、快く入社を決めてくれるでしょう。

 

④ 柔軟型へのアプローチ

 柔軟型は「少ししか情報を集めないのに、色々と考えてすぐに決めない」タイプです。

クリエイティブ系などに多い柔軟型は「妄想型」とも呼ばれ、口説き落とすのが少し厄介なタイプです。このタイプはネットの噂や口コミなどに惑わされやすく、意味のない疑心暗鬼に陥ることも多いです。

 このタイプには、先回りしてネガティブな情報も伝えるのがコツです。例えば「ネットではうちのことを悪く言う人もいるけど、実際は違うよ、本当はこうだからね」と疑心暗鬼の芽を潰しておきましょう。勿論、ネガティブな情報に対して、隠すような嘘をつくのではなく、きちんとした事実情報を伝えましょう。

 

 ここまで、4分類のアプローチをご紹介しましたが、実際のところすべての人間をたった4つのタイプに分類するのは無理があります。 実際は、境界線上にいたり、別のタイプの特徴を併せ持っていたりもします。ただし、少なくとも「個々人の意思決定スタイルは異なる」ということと、「スタイルに応じてアプローチを変える必要がある」ことを意識しておくのは極めて有用です。

 熟慮する「統合型」の人は、「押せ押せ」で迫れば、「この人は自分を騙そうとしているのではないか」と考え、即断即決の「決断型」の人は、「ゆっくりと考えて決めてくださいね」と悠長な態度を取れば、「自分は必要とされてない」と感じます。意思決定スタイルに合わないアプローチで決断を迫れば、逆効果にもなりかねないのです。

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は候補者に最終面接の合格、内定を出す際のポイントについてお伝えしました。
 候補者の内定辞退というのは、選考初期と違い、そこに至るまでに候補者と接点を持っているからこそ、人事の採用担当者の方にとっては非常に辛く、精神的にズシンとくるシーンだと思います。 また、この人だったら、自社で活躍してくれそうだ!という期待感もあるからこそ、非常に辛いものであると思います。
 ですが、候補者の方にも納得して意思決定、内定承諾して頂き、採用担当者の方もそれまでの活動を水の泡にしない為にも、そしてその採用を会社成長のエンジンとする為にも、是非今回の内容をご参考にして頂ければと思います。

 

参考文献

曽和利光 著「人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則」

就職みらい研究所「2019年3月度(卒業時点) 内定状況」 就職プロセス調査(2019年卒) 

https://data.recruitcareer.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/naitei_19s-201903.pdf

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曽和利光

曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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