内定辞退を防ぐフォロートークの考え方

採用活動の中で、多くの企業で取り入れられているものの一つが「面談」です。面談を担当するのは採用担当の方のみならず、企業によっては現場社員の方や、部長陣、経営者、リクルーターの方など様々な方が担当するケースもあるのではないでしょうか。

特に近年では、就職活動生の内定辞退を少しでも防ぐ為に、相互理解の場として面談を実施している企業も多いようです。

せっかく自社が採用したいと思える人材に出会えても、途中で辞退、内定辞退されてしまっては、苦労も水の泡となってしまいます。

 今回はいかにして関心の薄い優秀な学生を自社に志望してもらうか、内定承諾してもらうか、その為のフォロートークについてご紹介します。

採用活動において、学生と面談をする機会がある方は是非ともご参考ください。
また、人事の採用担当の方は是非リクルーターの方にも共有し、ご参考頂ければと思います。

1.内定者フォローの3つのステップ

 まず、フォローを行う上では順番が重要となります。 順番は下記の3ステップです。
最初初めて会った際はお互いに素性がわからないので、徐々に関係構築をしてくことが必要となるように、採用活動でのフォローにおいてもこの順番を意識してみてください。

 

1.1:ステップ① 信頼関係構築期

1.2:ステップ② 情報収集期

1.3:ステップ③ 説得勧誘期

 

それでは、順にご紹介していきたいと思います。

1.1:ステップ① 信頼関係構築期

まず最初は信頼関係構築期です。これは企業側も学生側もお互いが「胸襟(きょうきん)を開いて、話をしてもらえる雰囲気作りをする時期」です。

 この期間には、面談者は自己開示を行うことで、学生に面談者の人となりをわかってもらうことが大切です。 何故なら、数ある出会いの中で、学生からすれば企業側の面談担当者や面接官は基本的に初めて会った方であり、人となりまではよくわからない、「得体の知れない存在」であるからです。
ですので、まずは担当者側が自分が何者かを相手に伝えないと、学生は担当者を信頼できない為、本音や深い話をすることは難しいでしょう。 自分の心にある価値観、その価値観が形成されたきっかけや出来事、その価値観に繋がる現在の行動などを伝えることで、学生に「この人なら話してもいいかも」と思ってもらうことが重要です。

 担当者が学生から深い話を聞きたいのであれば、まずは担当者が同じ深さまで自分から降りていく必要があるのです。
ただ、担当者の中には、自己開示をすることに抵抗がある方もいるでしょう。その場合は、ヒアリングの最中に、学生の発言に反応する形で自然と自己開示することをお勧めします。

 この自己開示にはポイントがあります。 それはお互いの「共通点」に着目して自己開示をすることです。 履歴書や他の面接官の面接シートなど選考上の情報から、何か共通点がないか考えるといいでしょう。 関係を深める共通点は秘密、悩み、希少性、コンプレックスなどがありますが、コンプレックスなどの重い話をいきなりすることは、相手も抵抗を感じる可能性が高いため、比較的ライトな内容から徐々に開示するよう、心掛けてください。

 そして、自己開示を行うベストタイミングは「入社動機」を聞かれた時です。 学生と面談をしていると、「●●さんがこの会社に入ろうと思ったきっかけはなんですか?」、「どうしてこの会社に入ろうと思ったのですか?、「最後の決め手はなんでしたか?」などといった質問をされることが多いと思います。 この質問こそが自己開示をするチャンスとなります。ここで担当者がうまく自己開示できれば、相手との距離感は一気に縮まるでしょう。 入社動機を語る例については別の記事でも解説をしておりますので、是非そちらもご参照ください。※三橋さんのリンク張る※

1.2:ステップ② 情報収集期

 ステップ②は情報収集期です。フラットにキャリアカウンセリングをしているかのような時期となります。この情報収集期でのポイントは2つあります。

ポイント(1)フラットな雰囲気でのフォロー
ポイント(2)事実ではなく、「気持ち(心理的事実)」を重視

■ポイント(1)フラットな雰囲気でのフォロー
 相手に心を開いてもらう上で自己開示に並んで大切なのが、「損得勘定なしに、フラットに相談に乗る」ということです。 人は何か意図があると感じると、身構えて、批判的に話を聞きがちになります。自分を口説こうとしていると感じれば、学生は警戒します。どんなに良いことを言われても、大げさに行っていたり、話を作っているのではないかと思われてしまうのです。

■ポイント(2)事実ではなく、「気持ち(心理的事実)」を重視
 この段階では、どういう気持ちなのかを重視して聞くようにしましょう。 面接の様な、合否を出す(ジャッジをする)必要がある場においては、どんなことをやってきたのかという客観的事実を聞き出すのが望ましいのですが、フォローという段階においては事実かどうかは問題ではありません。
フラットな雰囲気を意識しながら、学生に寄り添い、心情を確認するようにしましょう。

情報収集期では、上記2つのポイントを意識しながら、下記情報をヒアリングすることをお勧めします。
(1)モチベ―ションリソース
(2)キャリア志向
(3)選社軸基準、企業選びの軸
(4)志望動機(フック)
(5)不安要素(ネック)
(6)意思決定スタイル
(7)その人の意思決定に強い影響を与えている人物

上記の情報を抑えることで、内定承諾の可能性がグッと高まるでしょう。
また、(4)~(7)については聞きにくかったり、聞き忘れる方が多い為、きちんと確認するようにしてください。
特に(5)の不安要素については、辞退に繋がりやすい部分ですので、必ず確認するようにしましょう。 学生の中には企業に対して誤解をしており、それが不安を増長させていることも多々あります。 その誤解を解く為には、何を誤解しているのかを知らないと解けませんので、意識的にヒアリングすることをお勧めします。
また、(1)、(2)については別の記事でも解説をしておりますので、是非ご参考ください。 ※三橋さんのリンクはる※

1.3:ステップ③ 説得勧誘期

 最後は説得勧誘期です。ここは、すっと情報が入るように情報を伝えていき、意思決定を促す時期となります。 学生の意思決定スタイルやモチベーションリソース、キャリア志向に応じて会社の情報を提供しましょう。

いくつかのパターンにあわせてポイントをご紹介します。

■パターン① 入社動機
学生「●●さんはどうしてこの会社に入ったのですか?」
ポイント:よくあるのは「××という事業をやっていて魅力を感じた」というフレーズです。しかし、これでは単なる事業の説明にすぎません。 
事業の説明はホームページに大抵書いてあるわけで、果たして学生は聞きたかったことなのでしょうか。 学生が本当に聞きたいのは、「そういう会社を【何故、あなたは】選んだのでしょうか?」ということです。

 ですので、ここでは、What(何が好きなのか)とWhy(なぜ好きなのか)という点を意識し、ドラマチックに語りましょう。
何故そう思うのか、どうしてそのような考えに至ったのか、という観点を踏まえるためにはご自身の生育史(生まれてから現在まで、どのようなことを経験して、どんな人に出会い、どう感じてきたのか)も併せて語ると、より説得力・具体性が増し、魅力的なトークとなります。

■パターン② 事業・仕事説明
学生「●●さんの会社は何をしている会社ですか?」、「●●さんは普段どんなことをしているのですか?」
ポイント:いわゆる事業や仕事に関する質問です。公募や求人媒体からエントリーしてきている場合は大抵学生も調べてきているので、事業に関して聞かれることは少ないですが、スカウト経由で学生との接点を持った場合は聞かれることもあります。

この場合、いずれにせよビジネスモデルの話は学生に刺さりにくいことが多いです。
上述した様に、単に事業説明をするのではなく、その事業・仕事の「社会的意義」を語ることで、学生の知的好奇心に訴えかけると、魅力的なトークとなるでしょう。

■パターン③ 組織風土
学生「●●さんの会社はどんな雰囲気の会社ですか?」
ポイント:よくあるフレーズは「うちは風通しが良い会社だよ」というものです。 ただ、これでは抽象的すぎて聞いている方はあまり頭に残りません。
 この場合は、「象徴的な事実」や、「社内でよく使われる言葉」を併せて語ると、学生の記憶に残りやすいトークになるでしょう。

「象徴的な事実」の例:若手でも挑戦できる環境を伝えたいのであれば「あのビックプロジェクトの責任者は入社4年目の26歳の人なんだ」というフレーズです。 このように、事実だけを相手に伝えることで、相手は「ということは、若いうちから裁量を持って働ける会社なのだな」と解釈をしてくれます。メッセージではなく、事実を伝え、相手に解釈させることがポイントです。

「社内でよく使われる言葉」の例:目標達成志向が強いことを伝えたいのであれば、「ハイ達成」、「達成率99%が1番良くない」などがあるでしょう。こちらも、メッセージではなく、よく使われる言葉という「事実」を相手に伝え、相手に解釈させることが大切です。

 恐らくみなさんも普段仕事をされていて、自社の風土を表すような象徴的な事象や言葉、フレーズなどがあるはずです。是非、今一度思い出してみて、トークの内容を整理して頂ければと思います。

2.不安要素(ネック)に対するカウンタートーク

最後は不安要素(ネック)に対するカウンタートークです。 これには3つのパターンがあります。

 

■パターン① ネックが真実であり、対策を取っている

 学生が抱いているネックの中には真実である場合もあるでしょう。この場合、当然ながら嘘をついたり、隠したりする訳にはいきません。 まずはネックを肯定する必要があります。

この肯定というのは、開き直るというのではなく、「問題をきちんと認識・自覚している」ということを示すことです。 学生もネックを企業側がきちんと自覚していることがわかれば、少しは安心するものです。 この場合は、きちんとした数字を挙げて、認識を示すことで相手により安心感を与える事ができます。

 

 肯定した後は、対応が二つに分かれます。

 一つはネックを解決しようとしている場合です。 自覚しているネックに対し、企業側はどの様な対策を具体的に取っているのかを語ります。 例えば、「たしかに今はこういう状態だけども、それについては我々もきちんと問題視していて、実際にこんな対策を打っているんだよ」という感じです。

 

■パターン② ネックが真実であり、トレードオフの関係にある

 もう一つの対応は、そのネックはたしかにネックではあるものの、トレードオフで別のメリットや現象が生まれている為、対処しようとしていない場合です。 月給は平均以下ではあるものの、住宅手当や研修費用、自己啓発費が充実している様なケースです。 トーク例としては、「たしかにそういう問題もあるのだけれど、実はそれによってこんな良いこともあるんだ。だから、全体最適で考えて、今はこんな方針ととっているんだ」という感じです。

こちらは答え方が難しいかもしれませんが、曖昧に濁すと不信感に繋がる為、率直に伝えることが大切です。

 

■パターン③ ネックが真実ではない

 最後のパターンは、ネックが真実ではない、誤った認識である場合です。これは上記①、②と比べて対処は簡単かもしれません。きちんと具体的な事実をもとにして否定すればいいでしょう。

 しかし、この際に気を付けなければことは、頭ごなしに否定するということです。そもそもネックに感じている人は疑っているわけなので、それに対して曖昧な回答をしていたら、むしろ怪しいと感じさせることにもなります。

 例えば、「労働時間が非常に長いんじゃないか」というネックに対しては、「うちは月の残業時間が45時間という上限が厳格に決まっていて、その枠内に収まるように日々マネジメントしているんだ。月45時間というのは、営業日20日で考えると、1日2時間くらいだね。定時が18時だから、20時くらいに退社するというのが上限になるかな。勿論、平均だからそれより遅くなることもあれば、18時にスパッと終えて、飲みに行ったり、プライベートな時間を満喫することもあるよ」という感じです。
具体的、且つ正確な数字を出して、定量化することで、学生も安心することでしょう。

 

 以上のようなケースを想定して、採用担当者は、自社に関するあらゆる数字(売上、利益、平均年齢、労働時間、退職率、平均給与など)を覚えて、きちんと回答できる状態になっておくことも大切です。

3.まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は、学生の志望度を上げ、内定を承諾してもらう為のフォロートークについてご紹介しました。
 人事の採用担当者のみならず、リクルーターの方においても、改めてご自身の入社動機やトークを見直してみてはいかがでしょうか。

 また、学生から出てくる質問については、よくある質問など傾向もありますので、特にネックに関してはきちんと準備しておくことをお勧めします。

 面談というのは学生にとっては非常に貴重な場となります。限られた時間の中で、相互理解を深め、双方が納得した意思決定をする為にも、是非ご参考にして頂ければと思います。

 

参考文献

曽和利光 著「人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則」

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曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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