若手の人材育成で上司が理解しておくべき5つのポイント

毎年春先の4月になるとイキイキとした若手の新人たちが入社し、社内の雰囲気もパッと明るくなります。 しかし、それもつかの間、しばらくすると新人合同研修や、上司先輩との相性を考えての配属・配置、受け入れ先での育成など人事の方や管理職の方々は慌ただしい日々が続くと思います。

 そんな中で「若手」の育成に苦労されている方も多いのではないでしょうか。

今回は、若手の育成にフォーカスをあてていきたいと思います。

1.若手人材育成の必要性が高まってきている

皆さま「ゆとり世代」というフレーズを耳にしたことがあるかと思います。

「ゆとり世代」とは、2002年実施の学習指導要領による教育(いわゆる「ゆとり教育」)を受けた、生年月日が1987年4月2日から2004年4月1日(現在33歳〜16歳まで)の方々を差します。

このゆとり世代と言われる方々は、ちょうど少子化問題が表面化してきた世代でもあり、属する人数も少ない世代です。

「ゆとり教育」の是非はともかく、ここに少子化が加われば、構造的に人材の数は少なくなっており、且つ優秀な人材の絶対数は少なくなってしまうわけです。

ただでさえ、求人倍率からもわかるように史上類に見ないほどの人材採用難時代なのです。

その為、「勝手に学んで、這い上がってこい!」「おれらの時もそうだったんだ!」と突き放すのではなく、企業側が若手の人材を育成する必要性が現代では非常に高まってきていると考えられます。

それまで熾烈な競争を潜り抜けてきた上の世代からすれば、「そんなに手厚く育成されるなんて羨ましい!」とすら思えるかもしれません。

 

2.若手育成の上で理解しておくべき2つのポイント

ところが、当の若手たちは、自分は様々な手厚い育成を受けてきていたとしても、新人教育などを命ぜられることについては、少々積極的には捉えられない人も多いようです。

 どういう事でしょうか。ここからは上の世代が若手に新人育成を依頼する上で理解しておくべきポイントをお伝えします。

2-1.若手は「後輩を育てよう」と思わないかもしれない

若手が新人教育に積極的ではないと上述しましたが、それを上の世代が若手のワガママと決めつけることは一方的過ぎるかもしれません。

というのも、20代の若手が新人教育に積極的ではないことにはいくつも理由があるからです。

その中でも第一の理由は、「そもそも20代はまだ後進を育てようという素直に思える時期ではない」ということです。

自分自身がまだ社会に入ったばかりで、学習や成長の途中であるわけです。 さらには昨今のグローバル化等の影響から競争の最中におり、人の面倒を見ていられるような状況ではないのです。

そんな時に、「後輩の教育も頼む」と言われても、素直に「はい、わかりました!」と快く引き受けるのでしょうか。 育てることにパワーをかけたことによって自分の業績が下がるかもしれません。 育てた新人がメキメキと成長して、自分を追い越し、自分のポジションが危なくなるかもしれません。なんのインセンティブもなければ、メリットもない。 彼らのやる気がなくなるのも当然と言えば当然とも考えられるでしょう。

2-2.若手は新人育成に向いていないかもしれない

 しかも、精神的な発達課題という面においても、20代は育成に向いているとは言えないかもしれません。

何故ならば、ドイツの心理学者エリク・エリクソンのライフサイクル理論によれば、20代の初めは青年期(12歳〜22歳)の後半で「アイデンティティ(≒自分らしさ)」の獲得であり、その後、結婚するまでの時期は成人期と呼ばれ、「親密性」といって、他者(特に異性)と情緒的で長期的な親密な関係を築くことが課題とされています。

言うならば、他人を育成することよりも前に、まず「他人と仲良くなることや愛すること」が第一課題です。

エリクソンによれば、そういう時期を踏まえた後にやってくる、子を産み育てる人が多くなる壮年期の発達課題こそが、親しくなった人や次の世代を育てることに関心を持つことです。

これを世代性とか生殖性(原語:Generativity)と言います。

この時期ならちょうど後進の育成にも自然に興味を持つでしょうが、それ以前の20代とは育成という仕事と発達課題がそもそもマッチしていないのです。

 

3. 若手に新人育成を依頼する際の3つのポイント

 しかし、このような逆風の中であっても、何人も部下を抱える管理職が新人教育までは面倒みきれないので、なんとか若手に協力してもらわなくていけない状況もあると思います。

では、どのような点を意識すればいいのでしょうか。

3-1.育成を任せるなら「負荷」を減らしてあげること

そのためには、まずこれまで述べたように、若手は新人育成などしたくないということを理解して、「協力」してもらうのだということを肝に銘じるべきです。

「協力」なので、責任はもちろん上の世代が取ると宣言すべきです。 且つ、育成の中において、できるだけ若手の負荷を減らし、なるべく楽しい仕事を任せ、嫌な仕事は率先して引き受けるべきです。

例えば、ネガティブなことをフィードバックするような仕事は上司が実施し、成功した時に褒めることは若手に任せる、など。

他にも、最初に仕事の基本や共通言語を教えたりするのは経験豊富で全体感のある上の世代が引き受け、その後少しは新人が自走できるようになってから若手に引き渡すことで、少しでも負荷を減らしてあげることも大切です。

 

3-2.最も大事な要素は「相性」をみること

その負荷の中でも最も大きなものは、育成する人と育成される人の相性が悪いことです。

転職理由の本音を調査すると「人間関係」がいつも一番になるように、相性の悪い人と働くことは非常に大きなストレスになります。

逆に言えば、育成をするにしても自分と相性のよい新人を育てるのであれば、自己の確立や親密性を伸ばすことが発達課題である若手にはちょうどいい、心地よいタスクになるかもしれません。

■「相性がよい」には2つある

「相性がよい」とは、似た者同士という「同質」と、助け合える者同士という「補完」があります。

後者は相性の良さを双方が自覚するために、しばらくコミュニケーションコストがかかるため、特に負荷を減らすという観点であれば、前者がよいでしょう。

負荷を減らした上で、さらにこうしたパーソナリティの類似性なども考慮した上で、新人の育成担当の若手を決めてあげるのであれば、最初は多少文句を言うかもしれませんが、そのうち「かわいい後輩ができた」となってくれるのではないでしょうか。

 

3-3.相性が合わない場合でも「認識」をさせること

ところが、実際にはすべてを相性の良い配属・配置にするのは非常に困難です。

何故なら人事の方であればわかると思いますが、配属地域や配属希望部署、知識やスキルといった制約条件があるからです。

 特に最近の学生については、「自分の地元で働きたい」、「異動はしたくない」、「出世は望まない」などの意向を企業側は汲み取る必要があり、相性が良くないだろうなと思いつつも、配置を決めることもあるでしょう。

 しかし、たとえ相性が良くない配置でも、それを認識しておくことが重要なのです。認識してさえいれば周囲はサポートすることができるからです。

 例えば、同質性が高い複数の新人をある部署に同時に配属する「集中配属」で、新人同士が支え合う環境を作るのもいいでしょう。 あるいは、入社3か月のタイミングでフォロー面談をしてもいいかもしれません。

 また、上司への働きかけも非常に有効です。 「今回配属される新人はあなた(上司)とは性格が異なるので、このような点に注意してマネジメントしてほしいです」と事前に伝えるだけでも結果は大きく変わってくるでしょう。

 

4.まとめ

 いかがでしたでしょうか。 若手人材の育成についてお話ししました。そもそも若手は新人を育成するのに向いていない可能性があるなど、驚いた方もいらっしゃるかと思います。 そんな中で当然ながら若手がその育成を担わないといけない企業もいらっしゃるでしょう。

繰り返しにはなりますが、その「向いていない」ということを上の世代、上司の方がきちんと理解した上で、協力してもらうスタンスを持つこと。 そして、「相性」を考えた上で育成担当や配属などを検討するということ。 これらを是非検討してみて頂ければと思います。 

参考文献

・心理学用語の学習「エリクソンのライフサイクル学習」

https://psychologist.x0.com/terms/144.html#1

 

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曽和利光

曽和利光

【経歴】 株式会社 人材研究所代表取締役社長。 1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。 「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。 2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任。 企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開する。

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